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村にひとつの温泉宿
馬路温泉は高知県安芸郡馬路村にある。村の観光サイトが「信号機もコンビニも、スーパーもないけれど」と書く、人口800人ほどの山の村だ。
その村でただ一軒の温泉宿。運営はコミュニティセンターうまじ。目の前を安田川が流れ、浴室からその川と山が見える。
分析書を全文出している
この宿を信用できると思うのは、温泉分析書をそのままサイトに載せているからだ。
源泉名は馬路温泉。泉質はナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉(低張性・弱アルカリ性・冷鉱泉)、泉温17.8度。高知県衛生研究所による平成19年7月24日の調査で、分析終了日は同年8月23日。
成分表も陽イオン、陰イオン、遊離成分まで全部出ている。炭酸水素イオン1,227ミリグラム、ナトリウムイオン572ミリグラム、メタホウ酸70.4ミリグラム(試料1キログラム中)。泉質別の適応症はきりきず、やけど、慢性皮膚病。禁忌症も注意事項も載っている。
源泉は村の中ノ川地区の地下60メートルから湧いていて、馬路村農協はこの源泉を使った化粧水を販売している。
土佐弁の温泉案内
サイトが全部土佐弁で書かれている。温泉のページはこう始まる。
「安田川のせせらぎを聞きながら、ゆったりと温泉に浸る。『あぁ、えいお湯や』と思わずつぶやきとうなるきね。馬路温泉に入ったら、ポカポカと温こうて、肌がしっとりしてくるきねぇ。『こりゃあたまるかえいお湯』ながよ」。
温泉療法の説明もそうだ。「『ちっとずつ』『じわじわ』がポイント。ハジメの数日は、1日に1回ばあで、5〜10分間浸かる程度にしちょきよ」。
こういう書き方の裏に、村の人が日常的に使う湯だという事実がある。
家族風呂が同じ料金
日帰り入浴は10時から21時。3歳から小学生300円、中学生以上600円。
面白いのは家族風呂で、30分の貸切なのに料金が大浴場と同じ。宿は「馬路温泉を贅沢に独占したかったら利用してよ。『人と一緒に入るのは恥ずかしい』という人にもぼっちりよえ」と書いている。
これは相当に良心的だ。子ども連れや、人の目が気になる人には大きい。
ゆず風呂とバラ風呂
馬路村といえばゆず。ゆず飲料「ごっくん馬路村」で全国に知られている。冬至の時期には、そのゆずを浮かべた風呂が立つ。
もうひとつがバラ風呂。宿の人気企画で、母の日の5月10日から始まり、2027年3月1日までの毎月1日に開催するという。「女性がお姫様気分を楽しめる」と書いてある。山奥の村の温泉でバラ風呂、という取り合わせが妙に効いている。
川に面した客室
客室は本館と木造別館に分かれる。
別館は天然素材・木造の洋室(定員2名・6室)で、安田川が見えるベランダとロフトが付く。和室(定員3名・4室)にもロフトがあって、宿は「子どもたちにとっては、まるで隠れ家のようなロフトに大喜びするで」と書いている。2階には広い和室(定員6名・2室)。いずれもバス・トイレ付き。
本館は和室3室(定員6名、バス・トイレなし)で、別館より安い。宿は「昔の馬路温泉というたら、この本館だけの小さな建物じゃった」と説明している。
全館禁煙。宿泊料に入浴料が含まれる。
アメゴとゆず
夕食はアメゴ(アマゴ)のゆず酢がけ、アメゴの刺身、鮎の塩焼き、炊合せ、酢の物、ゆずゼリー。朝食はアメゴの干物、温泉たまご、ジャコおろし。内容は季節で変わる。
村で採れた山と川の幸を使うので、アレルギーがあれば事前に伝えてほしいと宿は書いている。
ゆずと森林鉄道
宿から歩ける範囲に、ゆずの森加工場がある。「ごっくん馬路村」がどう作られているのか、製造ラインと荷造り場を自由に見て回れる。
かつて魚梁瀬杉を運び出した森林鉄道の遺構も残っていて、「ゆずとりんてつ」として日本遺産に認定されている。魚梁瀬地区の千本山には樹齢200年から300年、樹高50メートルにもなる魚梁瀬杉の巨木が林立している。
この宿を選ぶなら
高知の山奥まで来る覚悟がいる。安田駅から車で30分、安田川に沿って山へ入る。
そのかわり、分析書を全部出す誠実さ、家族風呂が同料金という気前のよさ、土佐弁で書かれた案内の人懐こさが、この宿にはある。ゆずの村に一泊して、川の音を聞きながら湯に入る。高知を旅するなら、こういう一日を入れておきたい。
馬路温泉のよくある質問
Q温泉の泉質は?
宿は温泉分析書を全文公開しています。源泉名は馬路温泉、泉質はナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉(低張性・弱アルカリ性・冷鉱泉)、泉温17.8度(高知県衛生研究所、平成19年7月24日調査)。炭酸水素イオン1,227ミリグラム、ナトリウムイオン572ミリグラム、メタホウ酸70.4ミリグラム(試料1キログラム中)。泉質別の適応症はきりきず、やけど、慢性皮膚病です。効き方は人によるので、気になることは医師に確かめてください。
Q日帰り入浴の時間と料金は?
10時から21時まで。3歳から小学生300円、中学生以上600円。家族風呂(30分貸切)の場合も料金は同じだと宿は案内しています。
Qゆず風呂やバラ風呂とは?
冬至の時期に「ユズ風呂」を、女性が楽しめる「バラ風呂」をやっていると宿は案内しています。バラ風呂は母の日の5月10日から始まり、2027年3月1日までの毎月1日に開催するとしています。
Q客室は?
木造別館は洋室(定員2名・6室)、和室(定員3名・4室)、広い和室(定員6名・2室)でいずれもバス・トイレ付き。本館は和室(定員6名・3室、バス・トイレなし)。全館禁煙で、宿泊料に温泉の入浴料が含まれます。チェックインは15時、チェックアウトは翌朝10時です。
Q食事は?
夕食はアメゴのゆず酢がけ、アメゴの刺身、鮎の塩焼き、炊合せ、酢の物、ゆずゼリーなど。朝食はアメゴの干物、温泉たまご、ジャコおろしなどの和定食です。内容は季節で変わります。食事場所はレストランで、夕食時に別メニューを注文することもできます(予約時に申し出)。
Qアクセスは?
土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の安田駅から車で約30分です。駐車場は30台、無料で予約不要です。
似た条件の宿
この宿と共通する条件を持つ、別の温泉地の宿です。並びは共通する条件の数で、順位ではありません。

岩井温泉 浪漫伝承の宿 明石家
鳥取県創業400年と宿は書いている創業400年と宿が書く岩井温泉の18室の宿。約48度の源泉を何も足さずに湯船へ入れる。総ヒノキの男女別浴室、佐治石を使った庭園露天風呂、貸切露天風呂「森の方舟」と貸切サウナがある。岩美駅から送迎あり。

奥飛騨百姓座敷の宿 藤屋
岐阜県岐阜県高山市奥飛騨温泉郷一重ヶ根、新平湯温泉のほぼ中央に建つ宿。築二百年の百姓座敷は移築ではなく、実際に百姓座敷として使っていた建物をそのまま使っていると公式サイトは書く。日本源泉湯宿を守る会に提出した調査表では加水も加温も循環もなしと開示している。源泉は一重ケ根温泉1号泉、湧出地の泉温130度を低温泉と混ぜて調整している。貸切露天が二つ、24時間無料。

壁湯天然洞窟温泉旅館 福元屋
大分県大分県玖珠郡九重町大字町田62-1、壁湯温泉の一軒宿。町田川の岸の岩壁にできた洞窟が、そのまま浴槽になっている。宿は300年以上前から自噴していると書く。日本秘湯を守る会の会員で、登録情報では泉質は単純温泉、源泉温度39度、湧出量は毎分1370リットル、加温は貸切湯のみ一部。浴場は五つ。客室は8室から9室の小さな宿で、日帰り入浴も受ける。
※ 料金・空室・設備・営業状況は変わります。当サイトが掲載しているのは創業年や建築など変わりにくい情報のみです。 最新の情報は予約サイト、または公式サイトでご確認ください。
