脱衣所や浴場の入口に、細かい字の書かれた紙が貼ってあります。
温泉分析書といいます。読み方を知っていると、その湯の性格が入る前に分かります。
泉質名を分解する
いちばん上に泉質名が書かれています。
「ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉」のような形です。長いのは、含まれる成分を順に並べているためです。
ハイフンの前が陽イオン、後ろが陰イオンにあたります。それぞれ量の多い順に並びます。この例なら、陽イオンではナトリウムが最も多く、陰イオンでは塩化物が最も多いということになります。
和倉温泉の湯はナトリウム・カルシウム-塩化物泉で、塩分濃度が国内でも高い部類に入ります。なめると明確に塩辛いのは、この並びがそのまま口に出るからです。
有馬温泉の金泉は含鉄・ナトリウム-塩化物泉です。「含鉄」が頭に付くのは、鉄が特徴的な成分として扱われるためです。空気に触れて赤褐色に変わるのはこの鉄によります。
pHと泉温
泉質名の近くに、pHと泉温が書かれています。
pHは酸性の強さです。7が中性で、低いほど酸性、高いほどアルカリ性になります。草津温泉は2.1前後、玉川温泉は1.2前後と、日本の温泉は幅が大きくなっています。
泉温は、源泉が湧いた地点の温度です。ここが浴槽の温度と一致しないところが分かりにくい点になります。
源泉の温度と浴槽の温度は違う
分析書の泉温は、あくまで湧出地点の値です。
浴槽に届くまでに配管を通り、外気に触れます。宇奈月温泉のように7キロ上流から引いている場合、その差は大きくなります。長い距離を通るあいだに湯は澄み、温度も下がります。
湯村温泉の荒湯は98度で噴き出します。そのままでは入れないので、浴槽に届くまでに温度を下げています。
逆に泉温が低ければ加温します。分析書に書かれた数字を、浴槽の温度だと読むと間違えます。
湧出量と湧出形態
湧出量が書かれていることがあります。毎分何リットルという形です。
自噴か動力揚湯かも記載されます。自噴は自然に湧き出しているもの、動力はポンプで汲み上げているものです。
湧出量はかけ流しが成り立つかどうかに直結します。浴槽を満たすだけの湯が常に湧いていなければ、循環や加水が必要になります。
成分総量
溶けている成分の合計が書かれています。1キログラムあたり何ミリグラムという形です。
この値が1,000ミリグラムに満たず、泉温が25度以上あるものが単純温泉です。「薄い」と言われますが、規定に満たないという意味であって、湯の価値の話ではありません。
鳴子温泉郷のように、狭い範囲で成分の異なる湯が並ぶ土地では、分析書を並べて見ると違いがはっきりします。
分析年月日を見る
紙の下のほうに、分析した年月日が書かれています。
定期的な更新が定められていますが、数年前のものであることは珍しくありません。湧出量も温度も変動するので、その時点の測定値だと考えてください。
なお、加水・加温・循環・消毒の有無は分析書とは別の掲示になっています。二枚を並べて見ると、その浴槽の湯がどういう状態で届いているかが分かります。
参考
環境省「温泉の保護と利用」(鉱泉分析法指針・掲示基準の掲載元)





