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三十二年かけて掘り当てた湯
八幡屋の湯の話は、源泉が出るまでの話から始まる。
公式サイトによれば、昭和56年、当時の社長がある大学教授に温泉開発の調査を依頼した。それまでこの宿は、湯温の低い源泉をボイラーで加温して出していた。天然の温かい湯で客を迎えたい、というのが動機だった。
ところが阿武隈地域に高温の湯は湧かない、というのが当時の常識だったという。昭和57年の地質調査、昭和60年の地下水調査。成果は出ない。
転機は平成20年、福島県温泉協会の総会だった。「阿武隈地域での高温泉開発の可能性」という講演を聞き、講演者に協力を依頼する。だがその直後、講演者は脳梗塞で倒れて長期入院した。宿の側は二か月に一度、見舞いと連絡を欠かさなかった、と書かれている。
本格的な調査契約が動き出したのは平成22年。そして平成25年8月6日、地下1450メートルから43度の湯が出た。
調査を始めてから32年である。この湯は「さくら源泉」と名づけられた。
二つの源泉を、使い分ける
八幡屋には源泉が二つある。使い方が違う。
入浴に使うのが、さくら源泉。源泉温度43.8度、pH9.8のアルカリ性単純温泉だと公式サイトは書く。自噴で毎分約200リットル、動力揚湯で毎分約400リットル。
もうひとつが「八幡の湯」。温度19.7度、pH10.0の単純弱放射能冷鉱泉で、ラドン含有量は18.5マッヘ単位/キログラム。冷たいので、そのままでは入れない。
この冷鉱泉を、宿はサウナに回している。ラドンを含んだ蒸気で満たした低温のミストサウナで、小石を敷いた床にバスタオルを敷いて横になる。「全国でも数少ない」と宿は書いている。
冷鉱泉を沸かして湯船にするのではなく、蒸気にして呼吸で取り込ませるという発想だ。効き方は人によるので、そこは宿の説明として読んでほしい。宿自身も「温泉の効能には個人差があります。持病をお持ちの方は医師にご相談の上」と添えている。
六十トンの石をくりぬいた風呂
本館2階の大浴場と露天風呂は「月待ちの湯・巨石くりぬき風呂」という。利用時間は24時間。
男性露天は、中国・福建省から切り出した全長約8メートル、重さ60トンの自然石をくりぬいたものだと宿は説明している。女性露天は大小三つの石を配した造り。
別館の帰郷邸には、5階と6階に「天望大露天風呂 稲荷山 丘の湯/谷の湯」がある。里山を見渡すパノラマの湯で、地元で採れるペグマタイトという石を使った岩庭を配している。石川町は鉱物の産地として知られる土地で、その石を風呂に持ち込んでいる。こちらは5時半から22時まで。
貸切風呂は別館4階に四つ。花の音、森の音、川の音、山の音。窓を額縁に見立てた造りだと宿は書く。
風呂の種類が多いので、二泊以上して順に回る使い方ができる。
かけ流しとは書いていない
これだけ湯に手をかけている宿だが、かけ流しかどうかは公式サイトにも楽天トラベルにも書かれていない。
書いていないものを、こちらで補うことはしない。毎分400リットルという揚湯量は多いほうだが、145室と風呂の数を考えれば、それだけで判断できる話でもない。
湯の扱いが気になるなら、予約前に直接聞いたほうがいい。聞けば答える宿だと思う。源泉の掘削経緯をあれだけ細かく公開しているのだから。
百四十五室という規模
総部屋数は145室。宴会場、会議室、結婚式場、カラオケサロン、居酒屋コーナー、売店、ゲームコーナー、エステサロン、夏季の屋外プールがある。駐車場は350台で無料。
山あいの温泉地に、これだけの施設がまとまって建っている。静かにこもる小宿ではなく、人が集まる場所として作られた旅館だ。
客室は和室、和洋室、洋室、準特別室、特別室。朝食はバイキング、夕食は食事処。団体プランや日帰りプランも用意していると宿は書いている。
八幡太郎の名前
屋号の八幡屋は、八幡太郎——源義家から来ている。
宿は楽天トラベルに「八幡太郎がゆかりの名湯、母畑温泉」と登録している。母畑という地名の由来も、義家の馬の傷がこの湯で癒えたという伝承として語られる。
伝承なので史実として扱うものではない。ただ、宿の名前と土地の名前が同じ物語から出ていることは、この温泉地の性格を表してはいる。
新しい源泉に「さくら」と名づけ、屋号には平安の武将の名前を残している。九百年の話と十年前の話が、同じ建物のなかに並んでいる。
どういう泊まり方に向くか
規模と設備から言えば、家族連れ、三世代、団体の宿である。
ひとりで静かに湯に向き合いたいなら、母畑温泉のほかの宿か、石川町にある猫啼温泉や片倉温泉を見たほうがいい。
逆に、何日か滞在して体を休める使い方なら、この宿の作りは合っている。24時間入れる本館の湯、朝から夜までの別館の湯、二種類のサウナ、貸切風呂。連泊して飽きない構成になっている。
三日湯という呼び名は、そういう泊まり方のための言葉だ。
母畑温泉 八幡屋のよくある質問
Q源泉が二つあるというのはどういうことですか
使い分けています。公式サイトによると、入浴に使うのは「さくら源泉」で、源泉温度43.8度、pH9.8のアルカリ性単純温泉。サウナに使うのは「八幡の湯」で、温度19.7度、pH10.0の単純弱放射能冷鉱泉、ラドン含有量18.5マッヘ単位/キログラムとしています。冷たい放射能泉を蒸気にしてサウナに引き込む作りです。
Qさくら源泉はいつからあるのですか
2013年(平成25年)8月6日に湧出したと公式サイトは書いています。それ以前は湯温の低い源泉をボイラーで加温して提供していたそうで、天然の温かい湯を出したいという当時の社長の意向で昭和56年から調査が始まり、32年かかったと説明されています。地下1450メートル、自噴で毎分約200リットル、動力揚湯で毎分約400リットルとしています。
Qかけ流しですか
宿はかけ流しかどうかを書いていません。書いていないものをこちらで補うことはしないので、湯の扱いが気になる人は予約前に宿へ直接聞いてください。
Qお風呂の種類を教えてください
本館2階に大浴場と露天風呂「月待ちの湯・巨石くりぬき風呂」があり、利用時間は24時間。別館の帰郷邸5階と6階に天望大露天風呂「稲荷山 丘の湯/谷の湯」、4階に貸切風呂が四つ、本館2階にラドン温泉サウナと麦飯石サウナがあります。別館の湯とサウナは夜10時までです。
Q三日湯とは何ですか
母畑温泉が続けて入る湯として知られてきたことを指す言い方です。宿は楽天トラベルに「『母畑温泉の三日湯』と云われるとおり、三日入って効果がある温泉として、昭和50年頃から筋肉痛、関節部の治療に最適として、相撲力士の間で密かな評判となる」と登録しています。効き方は人によるので、体のことで気になることがあれば医師に確かめてください。宿の公式サイトも「温泉の効能には個人差があります。持病をお持ちの方は医師にご相談の上」と書いています。
Qアクセスを教えてください
公式サイトはJR水郡線の磐城石川駅から車・タクシーで10分、福島空港から車・タクシーで10分、東北自動車道の矢吹ICからあぶくま高原道・空港IC経由で25分としています。楽天トラベルには磐城石川駅からバス20分、送迎あり・要予約と登録しています。駐車場は350台で無料。
似た条件の宿
この宿と共通する条件を持つ、別の温泉地の宿です。並びは共通する条件の数で、順位ではありません。

岩井温泉 浪漫伝承の宿 明石家
鳥取県創業400年と宿は書いている創業400年と宿が書く岩井温泉の18室の宿。約48度の源泉を何も足さずに湯船へ入れる。総ヒノキの男女別浴室、佐治石を使った庭園露天風呂、貸切露天風呂「森の方舟」と貸切サウナがある。岩美駅から送迎あり。

秩父七湯『御代の湯』 新木鉱泉旅館
埼玉県文政10年(1827年)創業埼玉県秩父市、約200年前から湧き続ける「御代の湯」を引く鉱泉宿。単純硫黄冷鉱泉で源泉温度約15度、加温して使う。つるっとした卵の白身のような肌ざわりから「卵水」と呼ばれる。露天風呂付き客室が石・陶器・ひのき・御影石の4種、直径150センチの御影石の貸切風呂もある。日帰り入浴は12時から21時。西武秩父駅からタクシー10分、送迎あり。通常は木曜定休。

湯の鶴温泉 あさひ荘
熊本県熊本県水俣市湯出1559-2、湯の鶴温泉にある全15室の宿。風呂は岩風呂、展望露天風呂、個室風呂が5部屋。宿は「泉質は無色透明の単純硫黄泉で、入浴すると肌のつるつる感がございます」と書き、展望風呂から桜と紅葉が眺められるとする。新水俣駅から車で約15分、水俣駅から湯の鶴温泉行きのバスで約25分。駐車場は6台。
※ 料金・空室・設備・営業状況は変わります。当サイトが掲載しているのは創業年や建築など変わりにくい情報のみです。 最新の情報は予約サイト、または公式サイトでご確認ください。
