「源泉かけ流し」は、浴槽の湯を再利用しないという意味です。
湧いた湯を注ぎ続け、溢れたぶんは捨てる。単純な方式ですが、成り立つ条件は限られています。
湯量がなければできない
かけ流しは、湯を捨て続ける方式です。
浴槽を満たすだけの湯が常に湧いていなければ足りません。多くの温泉地が循環や加水を併用しているのは、設備の都合というより湧出量の制約によります。
高湯温泉では、自然湧出の湯を加水せずに使っている宿が多くあります。浴槽に注ぎ続けて溢れさせる方式が成り立つのは、湧く量に余裕があるからです。
十津川村は2004年、全国で初めて村としての源泉かけ流し宣言を出しました。村内の公衆浴場と宿の浴槽で循環も加温もしないという内容です。これも湯量があってこそ成立します。
道後温泉は加温も加水もせず、自然に湧く湯をそのまま使っている源泉が多くあります。日本最古級の湯が今も自噴で足りているという事実そのものが、この温泉地の価値の中心にあります。
かけ流しでも加水していることがある
ここが混同されやすいところです。
かけ流しが指すのは「再利用しないこと」であって、「何も手を加えていないこと」ではありません。
源泉が熱すぎる場合は加水します。草津温泉は源泉が高温で湧くため、加水せずに温度を下げる方法として湯もみが行われてきました。長い板で湯をかき混ぜて冷ますこの作業は、加水を避けるための工夫です。
玉川温泉はpH1.2前後と強すぎるため、源泉100パーセントの浴槽と、50パーセントに薄めた浴槽が分けて用意されています。薄めることが前提になっている湯もあります。
逆に、湯がぬるければ加温します。万座温泉のように高温の湯が豊富な場所では不要ですが、泉温が低い温泉地では加温が普通です。
掲示を見れば分かる
浴場の入口には、温泉分析書と、加水・加温・循環・消毒の有無を示す掲示があります。
これは法令で表示が求められている内容です。四つの項目それぞれについて「あり」「なし」が書かれています。
予約サイトの説明文より、現地の掲示のほうが正確です。宿の紹介文で「かけ流し」とだけ書かれている場合、それが大浴場だけなのか、露天風呂も含むのか、客室の風呂はどうなのかまでは読み取れません。
消毒について
塩素などによる消毒は、衛生上の理由で行われます。
循環している浴槽ではほぼ避けられず、かけ流しの湯でも実施例があります。レジオネラ属菌への対策として保健所の指導で導入された経緯があり、消毒しているからといって湯が劣っているわけではありません。
匂いで分かることがあります。硫黄泉のような強い香りの湯では気づきにくく、無色透明の穏やかな湯では気づきやすくなります。
かけ流しが優れているとは限らない
かけ流しは方式の名前であって、湯の良し悪しを示すものではありません。
湯量が豊富でも成分が薄い湯はありますし、循環していても成分の濃い湯はあります。
そして、浴槽の温度が適切に保たれるかどうかは循環のほうが有利です。かけ流しの浴槽は、源泉の温度と外気に左右されます。冬の露天風呂ではぬるくなり、夏には熱くなることがあります。
何を求めるかで判断が変わります。湯そのものに向き合いたいならかけ流しに意味がありますが、快適さを求めるなら別の基準になります。





