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サウナで言う「ととのう」は、熱いところと冷たいところを行き来して、自律神経を切り替えることを指します。熱で交感神経を上げ、冷やして一気に下げ、外気で休む。この落差が体感を生みます。
同じことが、日本の湯治場に古くから残っています。しかも施設として整えられたのではなく、湯の温度が高すぎるという現実から生まれた形です。
温度の違う湯船が並んでいる
那須湯本の鹿の湯は、41度から48度まで温度の違う浴槽が並んでいます。
これは演出ではありません。源泉が高温で湧くため、加水せずに入れる温度まで落とす過程で、自然に複数の温度帯ができました。客は自分の耐えられる温度を選び、低いほうから順に体を慣らしていきます。
高温槽は慣れていないとかなり熱く感じます。長く入る場所ではなく、短く入って上がり、体が落ち着いてからまた入る。この繰り返しが、そのまま温冷交互浴になっています。
洗い場はありません。シャンプーも石鹸も使えません。ここは体を洗う場所ではなく、湯に浸かる場所です。
熱湯と冷の湯
八甲田の酸ヶ湯にある千人風呂は、総ヒバ造りの広い浴室に複数の湯船が並びます。
熱湯、四分六分の湯、冷の湯。名前が付いているのは、それぞれ温度も湧き口も違うからです。ひとつの浴室の中で、熱いところと冷たいところを行き来できます。
三百年以上、湯治場として使われてきた宿です。長期滞在の客が体を治すために、この温度差を使ってきました。
合わせ湯という作法
草津の大滝乃湯には合わせ湯があります。温度の違う湯船が段になって並び、低いほうから順に入って体を慣らしていく形です。
草津にはもともと時間湯という入浴法が伝わります。高温の湯に短時間だけ、湯長の号令に従って全員で入る。長い板で湯をかき混ぜて温度を下げる「湯もみ」は、この時間湯の準備として行われてきた作業です。
熱乃湯で実演されている湯もみは、観光向けに作られた見世物ではありません。加水せずに湯を冷ますという現実的な課題への答えが、唄と所作を伴う型になって残ったものです。
外気浴に向く場所
温冷交互浴で最後に効くのは、外に出て休む時間です。
万座温泉は標高およそ1,800メートルにあります。夏でも朝晩は冷え、露天風呂から見下ろす先に雲がある日があります。周囲に街の灯りが一切ないので、夜は星がよく見えます。濃い硫黄泉で温まり、高地の冷たい空気で休む。この落差は他で作れません。
蔵王温泉はpHおよそ1.3から1.6という強酸性で、冬は樹氷を見に上がってから湯に入る形になります。山の上と湯の中の温度差が、そのまま一日の設計になります。
サウナとの違い
温泉の温冷交互浴には、サウナにない要素がひとつあります。湯そのものに成分があることです。
酸性泉は肌にぴりりと来ます。硫黄泉は香りが強い。塩化物泉は湯上がりに熱が逃げにくい。同じ温度でも、泉質によって体感が変わります。
逆に、サウナのように「何分入って何分水風呂」と決めた形では入れません。湯の温度は日によって変わり、加水の可否も湯ごとに決まりがあります。掲示に従い、自分の体調で判断することになります。
入るときの注意
強い湯が多いので、無理をしないでください。
- 酸性泉や硫黄泉は長湯を避け、湯上がりに真水で流すと負担が軽くなります
- 銀製品は硫黄で変色するので外してください
- 高温槽は低いほうから順に体を慣らしてから入ってください
- 飲酒後の入浴は避けてください。温度差が大きいぶん、体への負担も大きくなります




