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青森からバスで山を登る。ブナ林が続き、人家が途切れる。八甲田の中腹、周囲に何もない場所で降ろされる。ここが酸ヶ湯である。
千人風呂に入る
扉を開けると、視界が一気に広がる。
総ヒバ造りの浴室に柱がほとんどない。梁だけが高い天井を支えていて、その下に湯船が並んでいる。熱湯、四分六分の湯、冷の湯。名前が付いているのは、それぞれ温度も湧き口も違うからだ。
湯は白濁している。強い酸性で、入るとぴりりと来る。舐めると酸味がある。名前のとおりの湯だ。
木の香りと硫黄の匂いが混ざる。声が高い天井に吸われて、思ったより静かに感じる。
湯治部という選択
この宿には湯治部がある。台所があり、長期滞在の客が自分で食事を作る。
旅館として泊まるか、湯治として泊まるかを選べる。同じ建物で、同じ湯に入るのに、過ごし方がまったく違う。廊下で会う人の目的が自分と違う、という感覚がある。
雪の中の一軒
八甲田は日本有数の豪雪地帯で、積雪は数メートルに達する。
宿は通年営業しているが、冬の道路状況は厳しい。バスは冬季ダイヤになる。車で向かうなら装備と道路情報の確認が要る。
それでも冬に人が来る。雪に埋もれた山の中に、灯りがひとつだけある。その光景は他では得られない。
着くまで
JR奥羽本線の青森駅からバスでおよそ70分。東京からは新幹線で新青森へ、そこからバスになる。合計5時間ほどかかる。
周囲に集落はない。八甲田の山中に一軒だけ建っている。
千人風呂に入るとき
千人風呂は混浴である。ただし、そのまま放置されているわけではない。
湯は白濁して底が見えない。段差があるので、足を探りながら入ることになる。
この宿を選ぶなら
設備の快適さを求める宿ではない。湯と建物、そして周囲に何もないことが価値になる。
八甲田ロープウェーが近く、樹氷や紅葉を見に上がれる。奥入瀬渓流と十和田湖も同じ範囲にある。
似た条件の宿
この宿と共通する条件を持つ、別の温泉地の宿です。並びは共通する条件の数で、順位ではありません。

鉛温泉 藤三旅館
岩手県1786年立ったまま入る深さ1.25メートルの「白猿の湯」を持つ宿。総けやき造りの本館に四つの浴場があり、宿は源泉5本を加熱も加水も循環もせずに使うと書く。旅館部と自炊の湯治部が同じ建物にあり、湯治の形が今も生きている。32室。

奥飛騨百姓座敷の宿 藤屋
岐阜県岐阜県高山市奥飛騨温泉郷一重ヶ根、新平湯温泉のほぼ中央に建つ宿。築二百年の百姓座敷は移築ではなく、実際に百姓座敷として使っていた建物をそのまま使っていると公式サイトは書く。日本源泉湯宿を守る会に提出した調査表では加水も加温も循環もなしと開示している。源泉は一重ケ根温泉1号泉、湧出地の泉温130度を低温泉と混ぜて調整している。貸切露天が二つ、24時間無料。

貝掛温泉
新潟県鎌倉時代の開湯と伝わる。本棟は明治2年(1869年)築清津川の谷、上信越高原国立公園に一軒だけ建つ「目の温泉」の宿。37度の源泉をかけ流す湯船と加温した42度の湯船を持ち、内湯4と露天3。江戸時代に目を患う者が多く訪れたと記録され、明治15年に湯守が目薬「快眼水」を発売した。木造2階建ての本棟は明治2年築、玄関棟は平成5年、離れは令和4年築で21室。南魚沼産コシヒカリを自家精米して炊く。大人の静養の宿で子供は原則遠慮。日本秘湯を守る会。日帰り入浴は11時から14時受付。越後湯沢駅からバス23分、バス停から送迎。
酸ヶ湯温泉をほかと比べる
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