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谷底の一軒宿
ランプの宿 青荷温泉は青森県黒石市沖浦、青荷渓谷の底にある。総部屋数は31室。
黒石市の「松の湯交流館」は、この宿を「黒石温泉郷の中でも一番山深くに位置する」と書いている。黒石温泉郷は温湯、板留、落合、青荷の四つ。市街地寄りの三つに対して、青荷だけが山のなかにある。
本館のほかに「ふるさと館」「幻渓楼」「十方堂」という三つのはなれがある。
ランプだけの夜
この宿がランプの宿と呼ばれるのは、比喩ではない。
各室に電灯がない。テレビもエアコンもない。携帯の電波も届かない。宿は自分で「圏外の宿」と書いている。
電気がまったく通っていないわけではない。宿の説明によれば、非常灯のために電気が引かれたのは四半世紀ほど前で、そのとき電化されたのは厨房の一部と冷蔵ケース、トイレの便座だけだった。
理由も二つ挙げてある。古い木造建築に配線を通すのが難しかったこと。そして、田舎の宿にはランプが似合うから大切にしたい、という判断。
現実的な事情と自分たちの選択を並べて書いている。売り文句だけで押していないところに好感が持てる。
夜になると、職人がランプを吊るした棹を担いでランプ小屋から出てくる。それを廊下や広間に掛けていく。
四つの湯、すべてかけ流し
風呂は四つある。公式サイトは泉質をこう書いている。「すっきりと澄んで肌にやさしい単純泉(無色透明・無味無臭)、源泉かけ流し」。
「健六の湯」は総ヒバ造り。24時間入れて、女湯のみ露天風呂が付く。
「本館内湯」は館の中心にある湯。5時30分から21時30分まで。
「滝見の湯」は吊り橋を渡った対岸にある。窓の向こうに滝と渓流が見える。内風呂と露天からなる。
「露天風呂」は岩造りの混浴で、女性専用の時間が設けられている。
四つとも源泉かけ流しだと宿は書き、加水や循環についての記載はない。黒石市の資料では泉温47.3度、低張性弱アルカリ性。
吊り橋を渡って湯に行く、というのはこの宿でしかできない。
歌人が開いた宿
開湯は1929年、昭和4年である。
開いたのは丹羽洋岳(本名 丹羽繁太郎)という人物だと公式サイトは書いている。黒石市板留の丹羽旅館の長男で、青森県の歌人。昭和34年11月3日、第1回の県文化功労賞を受けている。
板留温泉の宿の跡取りが、山の奥に自分の宿を開いた。そして歌を詠んだ。
「東北の人々が農閑期に訪れる湯治場として愛されてきた秘湯」と宿は続ける。作られた観光地ではなく、農閑期に体を休める場所として始まっている。
冬に行くということ
青荷へ行く道は、冬は一般車両が通行止めになる。
雪に閉ざされると自家用車では入れず、送迎バスで山道を30分揺られてようやく着く場所になる、と宿は書いている。
雪の谷底で、ランプだけの夜を過ごす。この宿がいちばん似合う季節は冬だ。同時に、いちばん行きにくいのも冬である。
集合場所と時間は予約時に必ず確かめておきたい。着いてからでは電波がなく、連絡が取れない。
何もしない、という過ごし方
宿は自分たちの売りを「不便という名の贅沢」と書いている。青森県公式観光情報サイトは「『何もない』という贅沢」と見出しを付けた。
部屋で画面を見ることはできない。することがないので、湯に入って、ランプを見て、寝る。
食事は大広間に集まって食べる。岩魚や山菜が中心の郷土料理だ。
これを退屈と取るか贅沢と取るかで、評価は割れる。行く前にそこだけは考えておいたほうがいい。設備を期待して行く宿ではない。
敷地には龍神の滝、ホタル池、ランプ小屋、吊り橋、足湯がある。日中は歩ける。
着くまで
公共交通で行くなら、弘南鉄道の黒石駅が起点になる。温川行きのバスで虹の湖公園まで行き、そこから宿の無料送迎バスに乗り換える。
車なら駐車場が50台あるが、冬期間は一般車両通行止めでシャトルバスになる。
日帰り入浴は10時から15時。黒石市の案内では4月1日から11月30日まで。
山へ入る前に時間があれば、黒石の市街地に寄っておきたい。中町のこみせ通りが国の重要伝統的建造物群保存地区に選ばれている。
ランプの宿 青荷温泉のよくある質問
Qお湯はかけ流しですか
公式サイトは四つの風呂すべてについて「すっきりと澄んで肌にやさしい単純泉(無色透明・無味無臭)、源泉かけ流し」と書いています。加水や循環についての記載はありません。黒石市の資料では泉温47.3度、低張性弱アルカリ性です。
Q風呂の構成と時間を教えてください
四つあります。総ヒバ造りの「健六の湯」は24時間で、女湯のみ露天風呂が付きます。「本館内湯」「滝見の湯」「露天風呂(混浴)」は5時30分から21時30分まで。滝見の湯には露天があり、吊り橋を渡った対岸にあります。混浴の露天風呂には女性専用の時間があります。
Q本当に電気がないのですか
各室に電灯はありません。宿は「非常灯をつけるために電気を通したのは、およそ25年ほど前のこと。それでも厨房の一部や冷蔵ケース、トイレの便座が電化されただけ」と書いています。テレビもエアコンもなく、携帯の電波も届きません。
Q冬はどうやって行くのですか
送迎バスです。宿は「冬場は雪に閉ざされて自家用車は通行止めになるため、送迎バスで山道を30分揺られてようやく辿り着く場所です」と書いています。集合場所と時間は予約時に必ず確かめてください。着いてからでは電波が届かず連絡が取れません。
Q日帰りで入れますか
入れます。黒石市の案内では10時から15時、日帰り入浴は4月1日から11月30日まで、冬期間は送迎時間に準じます。行く前に電話で確かめてから向かうのが確実です。
Q食事はどこで食べますか
大広間です。青森県公式観光情報サイトは「地元で採れた旬の食材をふんだんに使った料理」「岩魚や山菜が中心の素朴な味わいの郷土料理」「大広間に集まっていただく食事にもどこか懐かしさを感じます」と紹介しています。部屋食ではありません。
似た条件の宿
この宿と共通する条件を持つ、別の温泉地の宿です。並びは共通する条件の数で、順位ではありません。

岩井温泉 浪漫伝承の宿 明石家
鳥取県創業400年と宿は書いている創業400年と宿が書く岩井温泉の18室の宿。約48度の源泉を何も足さずに湯船へ入れる。総ヒノキの男女別浴室、佐治石を使った庭園露天風呂、貸切露天風呂「森の方舟」と貸切サウナがある。岩美駅から送迎あり。

白金温泉 碧の美 ゆゆ
北海道白金温泉の49室の宿。加水も加温も循環もしない100%源泉かけ流しだと宿は書く。源泉53度、pH6.9。日帰り入浴は11時から20時で大人1,200円。旧称は湯元白金温泉ホテル。

二岐温泉 大丸あすなろ荘
福島県江戸時代から大丸屋として旅籠を営む二岐山の麓、二岐川沿いに建つ日本秘湯を守る会の会員宿。江戸時代から大丸屋として旅籠を営んできた老舗で、六つの源泉をすべてかけ流しで使う。名物は川床の岩盤の亀裂から湯が自噴し、水流で削られた三つの甌穴の底から湧く「自噴泉甌穴岩風呂」。川面に手が届きそうな渓流露天風呂と、露天風呂付きの客室6室を含む全24室。日帰り入浴は11時から14時30分。新白河駅から1日1便の予約制バスが出る。
※ 料金・空室・設備・営業状況は変わります。当サイトが掲載しているのは創業年や建築など変わりにくい情報のみです。 最新の情報は予約サイト、または公式サイトでご確認ください。
