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河原に源泉がある
鷹の湯温泉は秋田県湯沢市秋の宮字殿上1。役内川の河畔に建つ一軒宿である。
源泉の場所がはっきりしている。宿は「源泉は当館の目の前、役内川の河原にあります」と書く。引き湯の距離がほとんどない。
もとの泉温は80度以上あった。宿によれば、昔はワラジを編むための藁をこの湯で煮ていたので「煮藁の湯」と呼ばれていたという。湯の名前が、生活の用途からついている。
女性がひとりで開いた宿
この宿の由来は、開湯伝説ではなく創業者の話である。
宿の記述を引く。「初代・小山田秀(おやまだ・ひで)がこの名湯を使って、女性ながら湯治宿を開いたのが明治18(1885)年のこと」。
二代目の八兵衛は「町のエジソン」と呼ばれた発明好きで、竹の反発力を生かした自動ドアや湯冷まし器を作ったという。標高1,433メートルの虎毛山に登山道を切り開いたのも八兵衛だと宿は書いている。
三代目の兵太郎は冬季の交通を整え、農閑期の冬に湯治客が集まるようになった。四代目の光太郎は深さ約130センチの立ち湯を作り、今では名物風呂になっている。
現在は五代目。四代にわたって何を足したかが、そのまま宿の紹介文になっている。
白井晟一が関わった建物
建物にも来歴がある。
宿の説明はこうだ。「1950年代前半に当館の改修を行なった際、独創的な建築スタイルから『異端の建築家』とも称された建築家・白井晟一氏が設計に携わってくださいました」。
館内では階段の手すりなどに当時の意匠が残る。特別室「鷹の間」にも、丸い柱など白井の特徴を感じられるしつらえが一部あるという。
エレベーターはなく、階段と段差の多い造りである。宿自身が「当館は昔ながらの建物のため、館内に階段や段差が多い造りとなっています」と注意を出している。バリアフリーの対応はない。
源泉温度が下がった話
この宿は、自分に起きた困った出来事を公式サイトに書いている。
もとは80度以上あった。それが2021年の夏頃、原因のわからないまま30度近くまで落ちた、と宿は書いている。翌年いちど戻り、また下がった。今の源泉地の泉温は、平均して40度ほどだという。
創業以来、自然に湧いた湯をそのまま各浴槽に引いていた。だからボイラーなどの温める設備がなかった。温度が下がれば湯を出せない。
宿はクラウドファンディングで資金を募り、設備を整えた。「おかげさまで設備が整い、以前のように温かい湯を提供することが叶いました。湯船によって加温は行っていますが、温泉自体の質は以前と変わりありません」。
温泉は自然のものだから、変わることがある。それを公表したうえで、何をしたかまで書く宿は多くない。
浴場ごとに、扱いが書いてある
湯の扱いについて、宿は浴槽単位で掲示している。
混浴半露天風呂は「かけ流し/加水なし/加温あり」、利用時間は6時から22時、終日混浴で湯あみ着の着用が可能。女性専用半露天風呂も同じく「かけ流し/加水なし/加温あり」で6時から22時。
河原野天風呂は「かけ流し/加水なし/加温なし」。宿は100パーセント源泉かけ流しと書き、源泉がぬるめなので夏の湯あみに向くとしている。おすすめは7月から8月、5月中旬から9月中旬頃まで天気や気温によって使える。ただし現在は当面の間利用できないと告知されている。
大浴場は明治の創業当時からの名残をとどめる名物風呂で、木枠の浴槽が三つある。湯船によって温度が違うので、ぬるめから熱めへ体を慣らしていくのがいいと宿はすすめている。
部屋は全室、川に面する
客室は8室。宿は「お部屋はすべて、当館の前を流れる役内川に面しています」と書いている。
10畳の部屋は2名から3名、8畳の部屋は1名または2名で使える。特別室「鷹の間」は10畳で2名から3名。いずれもバスなし、トイレ付き。
ひとりで泊まれる部屋が用意されているのは、山の一軒宿としてありがたい。日本温泉協会の施設情報にも1名宿泊、素泊まりの記載がある。
Wi-Fiはロビーのみ、全室禁煙。部屋食の提供はなく、食事は食事処か宴会場になる。
水曜と冬は閉まる
訪れる前に確かめたいのは営業日である。
宿は公式サイトで、毎週水曜日および冬季休館と案内している。日本秘湯を守る会の会員宿一覧では通年営業とされているが、宿自身の告知を優先したい。
日帰り入浴は受けている。ただし受付時間の記載は資料によって幅があるので、寄るつもりなら先に電話で確かめるのが確実だ。宿は電話の受付を20時までとしている。
行き方は単純だ。JR奥羽本線の横堀駅で降り、役内川をさかのぼって鬼首峠の方向へ20分ほど走る。日本秘湯を守る会の会員宿情報にもその道順が載っている。
秋の宮温泉郷 鷹の湯温泉のよくある質問
Qお湯はかけ流しですか
宿は浴場ごとに湯の扱いを掲示しています。混浴半露天風呂と女性専用半露天風呂はいずれも「かけ流し/加水なし/加温あり」、河原野天風呂は「かけ流し/加水なし/加温なし」で100パーセント源泉かけ流しとされています。加水はしていません。加温している理由は、2021年以降に源泉温度が下がったためです。
Q源泉の温度が下がったというのはどういうことですか
宿が公式サイトで経緯を公開しています。もともと泉温80度以上の熱い温泉でしたが、2021年の夏頃に源泉温度が30度近くまで低下する原因不明の現象が起こり、翌年に一度回復したものの再び低下。現在は源泉地での泉温が平均して40度ほどとのことです。創業以来ボイラーを持たなかったため、クラウドファンディングで資金を募って加温設備を整えたと宿は説明しています。
Qどんなお風呂がありますか
館内に2か所の半露天風呂があり、1つは混浴、もう1つは女性専用です。どちらも利用時間は6時から22時。混浴のほうは終日混浴で、湯あみ着を着用できます(売店で販売、持参も可)。ほかに明治の創業当時からの名残をとどめる大浴場と内湯があり、役内川の河原には石を組んだだけの野天風呂があります。野天風呂は当面の間利用できないと宿は告知しています。
Qいつ休みですか
宿は毎週水曜日および冬季休館と案内しています。日本秘湯を守る会の会員宿一覧では通年営業とされていますが、宿自身の告知のほうが新しいので、そちらを確かめてから予定を立ててください。
Q建物に由来がありますか
あります。宿は「1950年代前半に当館の改修を行なった際、独創的な建築スタイルから『異端の建築家』とも称された建築家・白井晟一氏が設計に携わってくださいました」と書いています。館内では階段の手すりなどに往時の意匠が見られ、特別室「鷹の間」にも丸い柱など氏の特徴を感じられるしつらえが一部残っているとしています。
似た条件の宿
この宿と共通する条件を持つ、別の温泉地の宿です。並びは共通する条件の数で、順位ではありません。

奥飛騨百姓座敷の宿 藤屋
岐阜県岐阜県高山市奥飛騨温泉郷一重ヶ根、新平湯温泉のほぼ中央に建つ宿。築二百年の百姓座敷は移築ではなく、実際に百姓座敷として使っていた建物をそのまま使っていると公式サイトは書く。日本源泉湯宿を守る会に提出した調査表では加水も加温も循環もなしと開示している。源泉は一重ケ根温泉1号泉、湧出地の泉温130度を低温泉と混ぜて調整している。貸切露天が二つ、24時間無料。

強首温泉 樅峰苑
秋田県大正6年(1917年)築の小山田家邸宅、昭和41年(1966年)から宿大正6年に大庄屋・小山田家の12代当主が建てた屋敷をそのまま宿にした、国登録有形文化財の7室。千鳥破風と唐破風を重ねた玄関、16メートルの秋田杉の一枚板の廊下、鹿鳴館風の階段室。平成20年に敷地内で掘り当てた含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉を、加水・加温なしで檜の大浴場と、樹齢380年の樅の木を望む総檜の貸切露天二つにかけ流す。雄物川のモクズガニの川蟹料理。中学生以上、車椅子は不可。日帰りは檜風呂のみ。峰吉川駅から送迎、秋田空港から16分。

青根温泉 湯元不忘閣
宮城県慶長年間に湯別当として始まり、当主は21代続くと日本秘湯を守る会に登録している宮城県柴田郡川崎町青根温泉1-1。伊達政宗が訪れた際に「この地忘れまじ」と名付けたと伝わる、仙台藩一門の湯治湯。川崎町は本館・離れ・門・蔵など計7棟が国の登録有形文化財と書く。土蔵の中に造られた蔵湯、木造建築と石風呂が調和する大湯など六つの湯屋があり、蔵湯と半露天の亥之輔の湯は貸切で使える。泉質は単純温泉、加水・加温なしの源泉かけ流し。全14室。日帰り入浴は受けていない。
※ 料金・空室・設備・営業状況は変わります。当サイトが掲載しているのは創業年や建築など変わりにくい情報のみです。 最新の情報は予約サイト、または公式サイトでご確認ください。
