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湯船の底が見えない。手を沈めると指先が消える。
にごり湯を目当てに温泉へ行く人は多いのですが、なぜ濁るのかは湯によって違います。理由が違えば、体感も注意点も変わります。
白く濁る湯
最も多いのが硫黄によるものです。
湯に溶けていた硫黄の成分が、空気に触れたり温度が下がったりすることで微粒子になり、光を散らして白く見えます。白骨温泉、乳頭温泉郷、万座温泉、酸ヶ湯、蔵王温泉、雲仙温泉。いずれも硫黄泉で、独特の匂いを伴います。
濁り方は日によって変わります。同じ湯船でも、乳白色に近い日と青みがかって見える日があります。白骨温泉の名は、この湯が湯船に成分を沈着させて白くすることに由来すると伝わります。
白濁は底が見えないということ
見た目の話にとどまりません。
底が見えないので、段差の位置が分かりません。足を探りながら入ることになります。湯船の縁や階段が分からず、思ったより深いということが起こります。
一方で、これは混浴の湯に入るときの心理的な負担を下げる要素にもなります。入ると腰から下が見えなくなるため、有名な露天風呂の多くが混浴であることと、白濁湯が多いことは無関係ではありません。
緑に見える湯
白と赤のほかに、緑がかって見える湯があります。
月岡温泉の湯はエメラルドグリーンと表現されます。硫黄を多く含む湯が空気に触れて変化するためで、濃度や光の当たり方で見え方が変わります。同じ湯でも日によって違って見えます。
硫黄の含有量が国内有数とされる湯で、香りも強く出ます。
加水しないから濁る
高湯温泉は吾妻連峰の中腹にあり、乳白色の酸性硫黄泉が湧きます。
特徴は湯量です。自然湧出の湯を加水せずに使っている宿が多く、浴槽に注ぎ続けて溢れさせる方式が成り立ちます。薄めていないぶん、濁りも香りもそのまま出ます。
湯量に余裕がなければ、この入り方はできません。濁りの濃さは、湧く量とも関係しています。
濁っていない硫黄泉もある
硫黄泉なら必ず濁るわけではありません。
那須湯本の鹿の湯は白濁しますが、同じ硫黄でも成分の出方や温度で見え方が変わります。逆に、濁っていなくても硫黄の香りが強い湯はあります。
色は成分の一部しか示していません。「濁っている=効きそう」という判断は、実際には根拠になりません。
濁る理由が違う湯
有馬温泉の金泉は、白ではなく赤褐色に濁ります。
地中では無色透明なのですが、空気に触れて鉄分が酸化するため、湯船に張られる頃には色が変わっています。含鉄泉に共通する現象で、登別温泉にも鉄分を含んで色づく湯があります。
同じ「にごり湯」でも、白は硫黄、赤は鉄。理由がまったく違います。
入るときの注意
濁る湯は成分が濃いことが多く、そのぶん体への負担も大きくなります。
- 硫黄泉・酸性泉は長湯を避け、湯上がりに真水で流すと負担が軽くなります
- 銀製品は硫黄で変色します。指輪やネックレスは外してください
- 白いタオルや水着に色が移ることがあります。赤褐色の湯では特に起こります
- 底が見えないので、足を探りながら入ってください
濁りは変わる
同じ温泉地でも、宿によって濁り方が違います。
引いている源泉が違えば当然変わりますし、湯船に届くまでの距離や温度でも変わります。箱根の仙石原や強羅では、大涌谷から引いた造成泉を使う宿は白濁し、自家源泉の宿は無色透明の湯が出ます。
「その温泉地に行けば白い湯に入れる」とは限りません。濁りを目的にするなら、宿を決める段階で確認してください。






