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金沢の奥座敷と呼ばれる
辰口温泉は石川県能美市の里山にある。宿は三軒。
能美市は公式サイトでこう書いている。「開湯1400年の歴史を誇る辰口温泉は、金沢から1番近い温泉地として親しまれています」。
金沢の奥座敷、という言い方をする。兼六園や近江町市場から車で30分から40分ほどの距離だ。
加賀温泉郷と呼ばれる山代、山中、片山津、粟津の四つは、もっと南にある。辰口はそれより金沢寄りにあって、そのぶん知られていない。
馬の脚を温めていた
開湯の伝えは馬の話から始まる。
石川県公式観光サイト「ほっと石川旅ねっと」によれば、始まりは1400年ほど前とされ、村人たちが傷ついた馬の脚を温めて癒していたと伝えられる。
ただし話はそこで続かない。度重なる洪水で源泉が埋まってしまい、数百年のあいだ泉源が見つからなかったという。
再興は江戸時代末期である。薬師如来のお告げで泉源を掘り当てたという村人、源助の名前が伝わっている。その住居跡は今も残されている。
1400年という数字と、江戸末期という数字。この温泉地には二つの起点がある。
三軒と、総湯と、足湯
能美市が挙げる施設は五つだ。宿が三軒、総湯が一つ、足湯が一つ。
最盛期には10軒あまりの宿が立ち並んでいたと石川県公式観光サイトは書く。今は三軒になった。そのぶん静かである。
総湯は「里山の湯」という。能美市温泉交流館という位置づけの日帰り入浴施設で、行灯のあかりに誘われて、のんびりと温泉を楽しむ、というのがコンセプトだと市は説明している。
浴室は内湯、サウナ、露天風呂。浴場は毎月男女入れ替えになる。午前10時から午後10時まで、第2水曜と第4水曜が休み。
足湯は里山の湯と温泉街を結ぶ散策路の途中にある。
三十三度の湯
能美市は源泉名を新辰口温泉、泉質をナトリウム-硫酸塩・塩化物泉(低張性弱アルカリ性温泉)としている。
石川県公式観光サイトは泉温を33.0度とする。
33度は、そのままでは入れない温度だ。加温して使うことになる。数字を見れば湯の扱いはおのずと決まる。
泉質別適応症として挙げられているのは、きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症。塩化物泉と硫酸塩泉に共通する並びだ。
能美市も石川県も「美人の湯」と書いている。肌にやさしい、という説明である。効き方は人によるので、そこは案内として読んでほしい。
泉鏡花が通った
温泉街の中央にある温泉広場に、文学碑が立っている。
明治の文豪、泉鏡花のものだ。鏡花は金沢の生まれで、幼いころからこの湯にたびたび訪れた。小説「海の鳴る時」の舞台にもなっている。
能美市は宿の一軒を「泉鏡花の小説『海の鳴る時』の舞台にもなった由緒ある温泉旅館」と紹介している。
文学碑の横には龍の像がある。辰口という地名の由来として、手取川の氾濫は住んでいる龍が暴れているからという説と、湯が龍の口のように噴き出していたからという説を、石川県公式観光サイトは並べている。
どちらにしても龍である。辰の口、と書く。
お薬師さんへ上がる
源助が作った堂が元になっているのが「集福寺」で、地元では「お薬師さん」と呼ばれている。
散策路が整備されていて、高台に薬師殿がある。さらに登ると延寿殿があり、ぼけ封じ観音といわれる白寿観音が祀られている。
5メートル近い地蔵菩薩は北陸最大級の石仏で、能美市の文化財に指定されていると石川県公式観光サイトは書く。江戸相撲で活躍した大関が、北陸巡業での勝利と念願成就を記念して奉納したとされる。
総湯の里山の湯は、この延寿殿の隣にある。丘は桜の名所でもある。
湯に入る前後に、坂を少し上がる。それだけで温泉地の成り立ちが見える作りになっている。
着くまで
公共交通なら、IRいしかわ鉄道の能美根上駅から「のみバス」連携ルートに乗り、辰口福祉会館で降りて徒歩2分。所要は35分ほどだ。
車なら北陸自動車道の能美根上スマートICから東へ10キロほど。JR小松駅から20分、小松空港から25分。
金沢からは車で30分から40分。宿によっては金沢駅や小松駅からの送迎がある。要予約なので、予約時に確かめたい。
いしかわ動物園が近く、九谷焼の産地でもある。湯だけで一日を埋める温泉地ではないので、周りと組み合わせる前提で考えたほうがいい。
辰口温泉の日帰り入浴
- 集福寺(お薬師さん)
- いしかわ動物園
- 九谷焼の窯元めぐり
金沢市街まで車で30分から40分ほど。兼六園や近江町市場と組み合わせられる。
受付時間・定休日・料金は施設ごとに異なり、変更されることもあります。 お出かけの前に各施設の案内をご確認ください。
温泉地カルテ
春・秋
- 所在地Location
- 石川県
- 泉質Spring Quality
- 塩化物泉・硫酸塩泉
- 最寄駅Nearest Station
- IR いしかわ鉄道 能美根上駅(のみバス約35分/車約15分)/JR小松駅(車約20分)
- 東京からFrom Tokyo
- 約3時間30分
- 大阪からFrom Osaka
- 約3時間
※ 泉質・泉温・pH は代表的な源泉の値です。施設ごとに異なる場合があります。 効能は泉質の一般的な適応症であり、効果を保証するものではありません。
辰口温泉のよくある質問
Q辰口温泉はどこにありますか
石川県能美市辰口町です。IRいしかわ鉄道の能美根上駅からのみバスで35分ほど、車なら15分ほど。JR小松駅から車で20分、小松空港からは25分ほどです。能美市は「金沢から1番近い温泉地」と案内しています。
Q開湯1400年というのは本当ですか
能美市が「開湯1400年の歴史を誇る辰口温泉」と公式サイトに書いています。石川県公式観光サイトによれば、始まりは1400年ほど前とされ、村人たちが傷ついた馬の脚を温めて癒していたと伝えられます。ただし度重なる洪水で源泉が埋まり、江戸時代末期にようやく掘り当てて再興したとされています。
Q泉質を教えてください
能美市は総湯の里山の湯について、源泉名を新辰口温泉、泉質をナトリウム-硫酸塩・塩化物泉(低張性弱アルカリ性温泉)としています。石川県公式観光サイトは泉温33.0度とし、泉質別適応症としてきりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症を挙げています。
Q日帰りで入れますか
入れます。総湯の「里山の湯」は能美市の温泉交流館で、午前10時から午後10時まで、毎月第2水曜日と第4水曜日が定休日です。内湯、サウナ、露天風呂があり、浴場は毎月男女入れ替えになります。里山の湯と温泉街を結ぶ散策路の途中には足湯もあります。
Q泉鏡花との関係は何ですか
明治の文豪である泉鏡花が幼いころからたびたび訪れ、小説「海の鳴る時」の舞台になりました。能美市は宿の一軒について「泉鏡花の小説『海の鳴る時』の舞台にもなった由緒ある温泉旅館」と書いています。温泉街の中央にある温泉広場には文学碑が立っています。
Q辰口という地名の由来は何ですか
石川県公式観光サイトは二つの説を挙げています。手取川の氾濫は住んでいる龍が暴れているからという説と、湯が龍の口のように噴き出していたからという説です。文学碑の横には龍の像があります。
ほかの温泉地と比べる
辰口温泉の宿

金沢辰口温泉 まつさき
石川県能美市辰口町、安土桃山の庭園を持つ30室の宿。公式サイトは源泉100パーセントだが泉温が36.5度とやや低いため循環加温をしていると書き、そのうえで本館大浴場に源泉そのままのぬるい浴槽を置いて交互浴をすすめている。鳳凰棟5階に三つの展望露天風呂、うち一つは貸切。天保7年に初代が新泉源を掘り当てて松崎旅館として創業したと宿は説明する。

辰口温泉 たがわ龍泉閣
文政2年(1819年)創業文政2年(1819年)創業の62室の宿。田んぼの真ん中から湧いた源泉を使う混浴の大露天風呂「田んぼの湯」がある。大浴場「天狗浴殿」は一度に100名が入れる。檜の貸切風呂が2か所、温泉露天付きの客室もある。金沢駅からバス40分。
UPDATED 2026.09.25

