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美肌の湯を名乗る温泉地は全国にあります。ただし、肌に作用する仕組みは一つではありません。
何が入っていて、どう働くのか。そこを知ってから選ぶと、期待とのずれが小さくなります。
とろりとするのは重曹
湯に手を入れた瞬間に、ぬるりとした感触があります。
これは重曹(炭酸水素ナトリウム)を含む湯で起こります。重曹には肌の角質をやわらかくするはたらきがあり、体をこするとさらに滑らかになります。
嬉野温泉がその代表です。鳴子温泉郷の中山平も同じ性質で、通称「うなぎ湯」と呼ばれます。下呂温泉はアルカリ性単純温泉で、pH9.2前後という高さが同じ方向に働きます。
分かりやすく体感できる湯なので、初めてでも違いが分かります。
豆腐が溶ける理由と同じ
嬉野には温泉湯豆腐という料理があります。
温泉水で豆腐を煮ると、重曹が豆腐の表面を溶かします。汁が白く濁り、豆腐の角が丸くなって、やがてとろけます。同じ豆腐を普通の水で煮てもこうはなりません。
肌に効く理由と、豆腐が溶ける理由は同じです。この対応が分かると、湯の性質が腑に落ちます。
保湿と保温を兼ねる湯
別の仕組みもあります。
玉造温泉は硫酸塩泉と塩化物泉の性質を併せ持ちます。保湿と保温の両方がはたらくため、湯上がりに肌がしっとりし、体も冷めにくくなります。
玉造の評判は古く、奈良時代の『出雲国風土記』に、一度入れば容姿が美しくなり、二度入れば病が癒えるという趣旨の記述が残ります。千三百年前の評判が、成分の説明とうまく噛み合っている珍しい例です。
温泉街には湯を持ち帰るための給湯所があり、化粧水として使うための小瓶も売られています。
やわらかい湯
刺激の少なさで語られる湯もあります。
別所温泉は単純硫黄泉で、やわらかい肌当たりです。道後温泉はpH9前後のアルカリ性単純温泉で、加温も加水もせずに使っている源泉が多くあります。
こちらは「つるつるになる」というより「疲れが出ない」湯です。何度も入る、長く浸かるという使い方に向いています。
強い湯は肌に優しくない
逆の話も書いておきます。
草津温泉はpH2.1前後、蔵王温泉はpH1.3から1.6という強酸性です。殺菌力が語られる湯ですが、肌への刺激は相当に強く、長湯すればひりつきます。
酸性泉や硫黄泉に入るときは、長湯を避け、湯上がりに真水で流すと負担が軽くなります。傷があればしみます。
美肌を目的にするなら、これらの湯は目的が違うと考えたほうが確実です。
名乗りに頼らない
「三大美肌の湯」のような呼び方は、団体や自治体によって挙げる温泉地が違います。統一された基準があるわけではありません。
見るべきは泉質です。とろりとした感触を求めるなら炭酸水素塩泉かアルカリ性単純温泉、湯上がりのしっとり感なら硫酸塩泉と塩化物泉。この二つを覚えておけば、名乗りに関係なく選べます。







