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殿様が名前を置いていった宿
湯元不忘閣は宮城県柴田郡川崎町青根温泉1-1。蔵王連峰の宮城側、山の中腹にある。
宿の名前には由来がある。川崎町の公式ページを引く。「かつて、伊達政宗公が訪れた際、『この地忘れまじ』という思いで“不忘”と名付けた開湯500年の温泉宿」。
忘れない、という言葉がそのまま屋号になっている。江戸時代には仙台藩の御殿湯が置かれ、伊達家一門の湯治湯として使われてきた。
日本秘湯を守る会に登録された情報では、慶長年間に湯別当として始まり、当主は21代続くとされている。湯別当とは、藩から湯の管理を任された役である。宿である前に、湯の管理者だった。
七棟が、登録有形文化財
この宿を語るとき、建物の話を抜きにはできない。
川崎町はこう書いている。「本館をはじめ、離れ、門、蔵といった計7棟が国指定の登録有形文化財となっています」。
一軒の宿で七棟。しかも門と蔵が含まれている。建物単体ではなく、敷地の構え全体が評価されているということだ。
青根温泉には、もう一軒文化財の宿がある。岡崎旅館の別館で、川崎町は「昭和元年完成の別館は古き良き風情を残しており、国の登録有形文化財となっています」としている。小さな温泉地に文化財の宿が二軒ある。
蔵の中の湯
六つある湯屋のうち、もっとも知られているのが蔵湯である。
土蔵の中に湯船がある。もともと物を入れるための建物に、湯を引いた。天井が高く、窓が少なく、外の音が入らない。楽天トラベルに載る宿の紹介文は、この湯を「異次元の世界」と呼んでいる。
大湯は、伊達藩一門が使った湯だ。川崎町は「美しい木造建築と石風呂の調和が見事な大湯」と書く。
新湯は、文人たちが愛した湯として紹介されている。日本秘湯を守る会に登録された情報には、享保5年に復元工事を終えたという記述がある。
そして亥之輔の湯。半露天の小さな隠れ湯で、これも貸切で使える。蔵湯と亥之輔の湯は、いずれも貸切無料と宿は案内している。
手を加えない単純温泉
湯そのものは派手ではない。
日本秘湯を守る会に登録された情報では、泉質は単純温泉、源泉温度52度、湧出量は毎分88.2リットル。加水・加温なしの源泉かけ流し。
単純温泉は成分が薄いという意味ではなく、特定の成分が規定量に届かない分類上の呼び名だ。刺激が弱いので長く入っていられる。六つの湯屋を順に回るという過ごし方に、この湯質は合っている。
川崎町は青根の湯について「肌がスベスベになることから『若返りの湯』と呼ばれ」と書いている。これは岡崎旅館の紹介文だが、同じ温泉地の湯である。
日帰りは受けていない
この宿は日帰り入浴を受けていない。
日本秘湯を守る会の会員宿一覧で日帰り入浴は×。理由も明記されている。「お泊まりいただくお客様に鮮度のいい温泉をお楽しみいただくため、日帰り入浴は受けたまわっておりません」。
六つの湯屋を14室で使う。客が増えれば湯の鮮度は落ちる。断る理由がはっきりしているので、こちらも納得しやすい。
日帰りで青根の湯に入りたいなら、温泉街の共同浴場「じゃっぽの湯」がある。
どう行くか
東北新幹線の白石蔵王駅が玄関口になる。
宿は楽天トラベルに、白石蔵王駅からミヤコーバスのメリキュール宮城蔵王ゆきに乗り、メリキュール宮城蔵王バス停で下車、そこから予約制の無料送迎があると登録している。駐車場は20台、予約不要。
全14室、1名利用も可。日本秘湯を守る会の会員宿である。
蔵の中の湯に、誰にも会わずに浸かる。七棟の文化財のなかで一晩過ごす。この宿を選ぶ理由は、そのあたりにある。
青根温泉 湯元不忘閣のよくある質問
Qお湯はかけ流しですか
日本秘湯を守る会に登録された情報では、泉質は単純温泉、源泉温度52度、湧出量は毎分88.2リットル、加水・加温なしの源泉かけ流しとされています。52度あれば浴槽に落とすあいだに自然に入れる温度まで下がるので、手を加える必要がありません。
Qどんなお風呂がありますか
川崎町は「館内には、土蔵内に造られた蔵湯や、美しい木造建築と石風呂の調和が見事な大湯など、6つのお風呂が完備されています」と書いています。日本秘湯を守る会の登録では内湯5、半露天1。楽天トラベルの紹介文では、伊達藩一門が使用した大湯、蔵湯(貸切無料)、文人たちが愛した新湯、そして小さな隠れ湯の半露天風呂「亥之輔の湯」(貸切無料)が挙げられています。
Q建物は文化財ですか
そうです。川崎町の公式ページは「本館をはじめ、離れ、門、蔵といった計7棟が国指定の登録有形文化財となっています」と書いています。一軒の宿で七棟がまとめて登録されている例は多くありません。
Q日帰りで入れますか
入れません。日本秘湯を守る会の会員宿一覧で日帰り入浴は×とされ、理由として「お泊まりいただくお客様に鮮度のいい温泉をお楽しみいただくため、日帰り入浴は受けたまわっておりません」と記されています。日帰りで青根の湯に入りたい場合は、温泉街の共同浴場「じゃっぽの湯」を使ってください。
Qひとりでも泊まれますか
泊まれます。日本秘湯を守る会の会員宿一覧には1名利用が可と登録されています。全14室の宿で、六つの湯屋を順に回る過ごし方ができます。
似た条件の宿
この宿と共通する条件を持つ、別の温泉地の宿です。並びは共通する条件の数で、順位ではありません。

奥飛騨百姓座敷の宿 藤屋
岐阜県岐阜県高山市奥飛騨温泉郷一重ヶ根、新平湯温泉のほぼ中央に建つ宿。築二百年の百姓座敷は移築ではなく、実際に百姓座敷として使っていた建物をそのまま使っていると公式サイトは書く。日本源泉湯宿を守る会に提出した調査表では加水も加温も循環もなしと開示している。源泉は一重ケ根温泉1号泉、湧出地の泉温130度を低温泉と混ぜて調整している。貸切露天が二つ、24時間無料。

田沢温泉 ますや旅館
長野県1550年から続き現在11代目。建物は明治期の推定で国登録有形文化財青木三山に囲まれた高楼の木造四階建て、国登録有形文化財の宿。前身は江戸以前から続く庄屋で、島崎藤村が若き日に逗留し「千曲川のスケッチ」に実名で登場する。pH9.6の無色透明の単純硫黄泉、41度のぬる湯を露天風呂と内湯、二つの貸切風呂に100%源泉かけ流しで使い、家族風呂は昔からの1号泉の39度。18室で、藤村が泊まった東館3階の「藤村の間」は建具と調度をほぼ当時のまま残し、浅間山まで見渡す。主人が山で採った松茸と山菜の会席。隣に共同浴場の有乳湯。上田駅からタクシー30分。

強首温泉 樅峰苑
秋田県大正6年(1917年)築の小山田家邸宅、昭和41年(1966年)から宿大正6年に大庄屋・小山田家の12代当主が建てた屋敷をそのまま宿にした、国登録有形文化財の7室。千鳥破風と唐破風を重ねた玄関、16メートルの秋田杉の一枚板の廊下、鹿鳴館風の階段室。平成20年に敷地内で掘り当てた含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉を、加水・加温なしで檜の大浴場と、樹齢380年の樅の木を望む総檜の貸切露天二つにかけ流す。雄物川のモクズガニの川蟹料理。中学生以上、車椅子は不可。日帰りは檜風呂のみ。峰吉川駅から送迎、秋田空港から16分。
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