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移築ではない百姓座敷
藤屋は岐阜県高山市奥飛騨温泉郷一重ヶ根。新平湯温泉のほぼ中央にある。
この宿の建物について、公式サイトは一点だけ強く書いている。
「築百数十年を数える百姓座敷は、今よくある古民家の移築ではなく、実際に百姓座敷として使っていた建物をそのまま使っており、今なおかつての奥飛騨のたたずまいを残しています」。
移築ではない、というのがこの文の芯だ。古民家風の宿は多いが、どこかから運んできた建物であることも多い。ここは建っていた場所に建ったままだと言っている。
楽天トラベルには築200年と登録している。日本温泉協会の施設情報は「客室も広間も風呂も全べてが奥飛騨桧づくり」としている。
加水も加温も循環もなし
藤屋は日本源泉湯宿を守る会の会員で、調査表を公開している。そこに湯の扱いが項目ごとに出ている。
「加水(冷却用)・加熱等の有無 なし」。
「浴槽水の循環利用・ろ過・滅菌等の有無 なし」。
温度の調節については「低温泉と混合している」と書かれている。水で薄めるのではなく、別の温度の温泉と混ぜている。
公式サイトのトップには「源泉100% 極上の温泉」とあり、同じページに「安全な源泉湯宿のQ&A」という項目が並ぶ。源泉が安全であること、源泉を知らされること、源泉を選べること、源泉にたいして意見が言えること。客が求めることと、湯宿が答えることが対で書いてある。
こういう形で情報を出している宿は少ない。
百三十度の源泉
数字がはっきりしている。
源泉名は一重ケ根温泉1号泉。所有は共有。掘削井で、井孔の深さは300メートル。湧出状況は掘削自噴。
温度130度(平成20年8月12日測定)。湧出量は約300リットル毎分。引湯距離600メートル、引湯方法は自然落差。
130度というのは、地下で加圧された状態の温度だ。地上に出れば沸騰して下がる。それでも高い。低温泉と混ぜる以外に、浴槽に入れる方法がない。
泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉。湧出地のpH8.32、蒸発残留物1798ミリグラム毎キログラム。知覚的試験は無色透明・無味・弱硫黄臭。
檜の内湯と、二つの貸切露天
日本温泉協会の施設情報では、露天風呂数4、貸切浴場数2。
内風呂は総檜造りで大小二つある。宿は「内風呂には大小2つの浴ぶねがあり、高温浴と低温浴が楽しめます」と書いている。高温と低温を行き来する入り方は、温度差のある源泉を持つ宿でよく見る組み立てだ。
露天は男女別の岩風呂で、24時間入れる。
家族貸切露天風呂は二か所。「手摺、スロープ、シャワー付で24時間無料でご利用頂けます」。使うときはフロントの湯桶にある錠を持っていき、出たら錠を戻す。鍵の管理を客に任せる方式だ。
手摺とスロープがあると書いてあるのは、足元に不安のある人には大きい。
飲湯もできると宿は書いている。
かか様料理と囲炉裏
食事は囲炉裏で出す「かか様料理」。
日本源泉湯宿を守る会の紹介文に、こんな一節がある。「ロビーで目についたのが壁に飾られた囲炉裏を囲む3世代の家族の写真。囲炉裏の火の温かさと家族ぐるみのもてなしが、この宿の原点になっている」。
宿の主人は農薬を使わずに野菜を作っていて、それを料理に使う。公式サイトには「百姓オヤジのブログ」という欄があり、スイカができた、花が咲いた、といった記事が並んでいる。
山菜、川魚、ぼたん鍋。奥飛騨の山の食事である。
小さく、ひとりでも泊まれる
客室数は資料で食い違う。日本温泉協会は7室・宿泊定員25名、楽天トラベルは10室。
どちらにしても小さい宿だ。そのうえで、1名宿泊可、素泊まり可、日帰入浴可(10時から15時)と日本温泉協会の施設情報にある。
ひとりで泊まれて、素泊まりもできて、日帰りでも入れる。小さな宿が取りうる選択肢を全部開けている。
新平湯温泉は宿が50軒ほどある賑やかな温泉地だが、そのなかにこういう一軒が混じっている。
着くまで
JR高山駅から濃飛バスの新穂高行きで60分ほど。一重ケ根のバス停で降りる。
車で来るなら、高山側からでも松本側からでも1時間弱を見ておきたい。宿は高山ICから50キロ、松本ICから70キロという距離を案内している。
チェックインは15時から24時まで。最終チェックインが24時というのは珍しい。遅い到着にも対応するということだ。
駐車場は15台で無料。冬は雪が深いので、装備と時間の余裕が要る。
奥飛騨百姓座敷の宿 藤屋のよくある質問
Qお湯はかけ流しですか
日本源泉湯宿を守る会に出している調査表で、「加水(冷却用)・加熱等の有無 なし」「浴槽水の循環利用・ろ過・滅菌等の有無 なし」と開示しています。温度の調節は低温泉と混合することで行っているとしており、水で薄めてはいません。
Q泉温130度というのは本当ですか
源泉の湧出地での測定値です。日本源泉湯宿を守る会の調査表には、源泉名 一重ケ根温泉1号泉、井孔の深さ300メートル、温度130度(平成20年8月12日測定)、湧出量約300リットル毎分、引湯距離600メートル、引湯方法は自然落差と記載されています。そのままでは入れないので、低温泉と混ぜて浴槽に入れています。
Q築二百年というのはどの部分ですか
百姓座敷です。公式サイトは「築百数十年を数える百姓座敷は、今よくある古民家の移築ではなく、実際に百姓座敷として使っていた建物をそのまま使っており、今なおかつての奥飛騨のたたずまいを残しています」と書いています。楽天トラベルには築200年と登録しています。客室も広間も風呂も奥飛騨の檜づくりです。
Qお風呂の構成を教えてください
日本温泉協会の施設情報では露天風呂数4、貸切浴場数2。内風呂は総檜造りで大小二つあり、高温浴と低温浴ができます。家族貸切露天風呂は手摺、スロープ、シャワー付きで24時間無料。入浴の際はフロントの湯桶にある錠を持っていく仕組みです。飲湯もできると宿は書いています。
Q日帰りで入れますか
入れます。日本温泉協会の施設情報では日帰入浴可、時間は10時から15時です。素泊まりも可、1名での宿泊も可となっています。
Q何室ありますか
資料で食い違います。日本温泉協会の施設情報は7室・宿泊定員25名、楽天トラベルは総部屋数10室と登録しています。いずれにしても小さな宿です。
似た条件の宿
この宿と共通する条件を持つ、別の温泉地の宿です。並びは共通する条件の数で、順位ではありません。

強首温泉 樅峰苑
秋田県大正6年(1917年)築の小山田家邸宅、昭和41年(1966年)から宿大正6年に大庄屋・小山田家の12代当主が建てた屋敷をそのまま宿にした、国登録有形文化財の7室。千鳥破風と唐破風を重ねた玄関、16メートルの秋田杉の一枚板の廊下、鹿鳴館風の階段室。平成20年に敷地内で掘り当てた含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉を、加水・加温なしで檜の大浴場と、樹齢380年の樅の木を望む総檜の貸切露天二つにかけ流す。雄物川のモクズガニの川蟹料理。中学生以上、車椅子は不可。日帰りは檜風呂のみ。峰吉川駅から送迎、秋田空港から16分。

青根温泉 湯元不忘閣
宮城県慶長年間に湯別当として始まり、当主は21代続くと日本秘湯を守る会に登録している宮城県柴田郡川崎町青根温泉1-1。伊達政宗が訪れた際に「この地忘れまじ」と名付けたと伝わる、仙台藩一門の湯治湯。川崎町は本館・離れ・門・蔵など計7棟が国の登録有形文化財と書く。土蔵の中に造られた蔵湯、木造建築と石風呂が調和する大湯など六つの湯屋があり、蔵湯と半露天の亥之輔の湯は貸切で使える。泉質は単純温泉、加水・加温なしの源泉かけ流し。全14室。日帰り入浴は受けていない。

鉛温泉 藤三旅館
岩手県1786年立ったまま入る深さ1.25メートルの「白猿の湯」を持つ宿。総けやき造りの本館に四つの浴場があり、宿は源泉5本を加熱も加水も循環もせずに使うと書く。旅館部と自炊の湯治部が同じ建物にあり、湯治の形が今も生きている。32室。
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