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役内川に沿って、点々と
秋の宮温泉郷は秋田県湯沢市、県の最南東部にある。栗駒国定公園に属する山岳地帯の西側、役内川の流れに沿った一帯だ。
ひとつの温泉街があるわけではない。日本温泉協会はこう説明している。「高松岳の西側山麓に位置する温泉郷。役内川に沿って点在する湯ノ岱、稲住、鷹ノ湯、湯ノ又などの秘湯群を総称して秋の宮温泉郷と呼んでいる」。
鷹の湯温泉の公式サイトも「周辺には当館を含めて5軒の湯宿が点在し、秋の宮温泉郷と呼ばれています」と書く。歩いて回れる距離ではなく、車で移動する温泉郷である。
秋田で最も古い、という言い伝え
この温泉郷にまつわる話で、いちばんよく語られるのが開湯の古さだ。
鷹の湯温泉の公式サイトを引く。「今からおよそ1300年前、奈良時代の養老年間に行基法師によって発見されたと伝わる古湯です。秋田県内ではもっとも古い温泉ともいわれています」。
養老年間は西暦717年から724年。行基は各地の開湯伝説に名前が出る僧で、実際に来たかどうかを検証する手立てはない。ただ、そう伝えられてきたという事実そのものが、この土地が長く湯の場所として認識されてきた証でもある。
鷹の湯という名の由来も宿が伝えている。傷ついた鷹がこの湯で傷を治し、元気に羽ばたいていった——。動物が傷を癒した、という型の伝説だ。
国が選んだ保養地
秋の宮温泉郷は国民保養温泉地に指定されている。
環境省が公開している国民保養温泉地計画の一覧に「秋ノ宮温泉国民保養温泉地計画」があり、直近の改訂は令和3年6月とされている。日本温泉協会の温泉地情報にも国民保養温泉地と記されている。
国民保養温泉地は、湯の質だけでなく、療養や保養に使える環境が整っているかも見て指定される。観光地としての華やかさではなく、長く滞在して体を整えられるかどうかが基準になる。
実際、この温泉郷の宿には自炊専門の湯治棟を持つところがある。日本温泉協会は鷹の湯温泉について「別棟に自炊専門の湯治棟があり、長期滞在して、温泉療養をしていただいています」と書いている。
塩化物泉が、深いところから
日本温泉協会が載せている秋の宮温泉郷の泉質は塩化物泉。鷹の湯温泉についてはナトリウム-塩化物泉、泉温73度、色は無色透明としている。
塩化物泉は、体に塩の膜を作って熱を逃がしにくくする。湯上がりに冷めにくいのはそのためだ。冬の長い秋田で湯治に使われてきたのは、この性質と無関係ではない。
鷹の湯温泉の源泉は宿の目の前、役内川の河原にある。もともと泉温が80度以上あり、昔はワラジを編むための藁を煮ていたので「煮藁の湯」と呼ばれていた、と宿は書いている。
源泉の温度が下がった
近年、この温泉郷でひとつの事件が起きている。
鷹の湯温泉の公式サイトが、経緯を自ら公開している。「鷹の湯は当初より泉温80度以上の熱い温泉でしたが、2021年の夏頃、源泉の温度が30度近くにまで低下する原因不明の現象が起こりました。翌年、一度は温度が回復しますが、再び低下。現在は源泉地での泉温が、平均して40度ほどになっています」。
この宿は創業以来、自然に湧いた湯をそのまま各浴槽へ引いていた。だから温める設備がなかった。温度が下がれば、湯を出せなくなる。
宿はクラウドファンディングで資金を募り、加温の設備を整えた。「おかげさまで設備が整い、以前のように温かい湯を提供することが叶いました。湯船によって加温は行っていますが、温泉自体の質は以前と変わりありません」。
温泉は自然現象だから、変わることがある。それを隠さずに書いている宿の姿勢は、記録として残しておく価値がある。
冬と水曜に注意
訪れる前に確かめたいことがある。営業日だ。
鷹の湯温泉は公式サイトで、毎週水曜日および冬季休館と案内している。日本秘湯を守る会の会員宿一覧では通年営業とされているが、宿自身の告知のほうが新しい。
雪の深い地域である。冬に向かうなら、宿の営業と道路の状況を必ず先に確かめてほしい。
どう行くか
最寄りはJR奥羽本線の横堀駅。日本秘湯を守る会は「役内川にそい、横堀から鬼首峠の方へ20分ほど」と書いている。
鬼首峠を越えれば宮城県の鳴子方面に出る。逆に北へ向かえば小安峡や川原毛地獄がある。秋田県南の湯を回る旅の、南端の拠点になる位置だ。
紅葉の時期が濃い。日本温泉協会も「秋の紅葉は絶景」と書いている。山に囲まれた谷に湯が点在しているので、宿から一歩出れば色が目に入る。
秋の宮温泉郷の日帰り入浴
- 虎毛山
- 小安峡
- 川原毛地獄
宿によって休館日や日帰り入浴の受付時間が違う。鷹の湯温泉は毎週水曜日および冬季休館。
受付時間・定休日・料金は施設ごとに異なり、変更されることもあります。 お出かけの前に各施設の案内をご確認ください。
温泉地カルテ
春・夏・秋
- 所在地Location
- 秋田県
- 泉質Spring Quality
- 塩化物泉
- 最寄駅Nearest Station
- JR奥羽本線 横堀駅から車で約20分
- 東京からFrom Tokyo
- 秋田新幹線か東北新幹線で北へ出て、奥羽本線の横堀駅へ。そこから役内川沿いに鬼首峠の方向へ車で20分ほど。
※ 泉質・泉温・pH は代表的な源泉の値です。施設ごとに異なる場合があります。 効能は泉質の一般的な適応症であり、効果を保証するものではありません。
秋の宮温泉郷のよくある質問
Q秋の宮温泉郷にはいくつ宿があるのですか
鷹の湯温泉は公式サイトで「周辺には当館を含めて5軒の湯宿が点在し、秋の宮温泉郷と呼ばれています」と書いています。日本温泉協会は湯ノ岱、稲住、鷹ノ湯、湯ノ又などの名前を挙げて、これらを総称して秋の宮温泉郷と呼ぶと説明しています。ひとつの温泉街があるのではなく、役内川に沿って湯が点在する形です。
Q泉質は何ですか
日本温泉協会は秋の宮温泉郷の泉質を塩化物泉、鷹の湯温泉についてはナトリウム-塩化物泉、泉温73度、色は無色透明と載せています。鷹の湯温泉の公式サイトも泉質をナトリウム-塩化物泉としています。効き方は人によるので、気になることは医師に確かめてください。
Q国民保養温泉地に指定されていますか
されています。環境省が公開している国民保養温泉地計画の一覧に「秋ノ宮温泉国民保養温泉地計画」が載っており、直近の改訂は令和3年6月とされています。日本温泉協会の温泉地情報にも国民保養温泉地と記されています。
Q秋田県で最も古い温泉というのは本当ですか
鷹の湯温泉の公式サイトは「今からおよそ1300年前、奈良時代の養老年間に行基法師によって発見されたと伝わる古湯です。秋田県内ではもっとも古い温泉ともいわれています」と書いています。伝承であって記録で確定しているものではないので、そう言われている、という形で受け取るのが正確です。
Q冬も行けますか
宿によります。鷹の湯温泉は公式サイトで毎週水曜日および冬季休館と案内しています。雪の深い地域なので、冬に向かう場合は宿の営業と道路の状況を必ず先に確かめてください。紅葉の時期は日本温泉協会も絶景と書いています。
ほかの温泉地と比べる
秋の宮温泉郷の宿

秋の宮温泉郷 秋の宮山荘
秋田県営の41室の温泉旅館。大浴場は男女とも約50坪で、ジャグジー・サウナ・露天風呂・打たせ湯・寝湯・温湯・大浴槽の7種類が並ぶ。日帰り入浴も受け入れる。2026年は外壁工事で露天風呂が11月末まで使えないので、行く前に宿の告知を見ること。

秋の宮温泉郷 鷹の湯温泉
明治18年(1885年)に初代・小山田秀が湯治宿を開いたと宿は書いている秋田県湯沢市秋の宮字殿上1、役内川の河畔に建つ一軒宿。源泉は宿の目の前の河原にある。明治18年に女性の手で開かれた湯治宿で、現在は五代目。1950年代前半の改修に建築家の白井晟一が関わり、特別室「鷹の間」や階段の手すりに意匠が残る。浴場は大浴場、内湯、混浴半露天、女性専用半露天、河原野天風呂など。日本秘湯を守る会の会員宿で、毎週水曜日と冬季は休館する。
UPDATED 2026.09.24


