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湯に浸かって顔を上げると水面がある。この構図は、山あいの温泉地では作れません。
ただし海と湖では、見えるものも入れる条件もかなり違います。
海のすぐ横にある湯
白浜の崎の湯は、湯船のすぐ先が太平洋です。屋根がなく、波しぶきがかかることもあります。『日本書紀』に記録の残る湯脈を引いており、日本最古の湯の一つとされます。
同じ白浜には、湯浴み着を着て入る海沿いの露天風呂を持つ宿もあります。
指宿は湯船ではなく砂です。海岸の砂が地下から湧く温泉で温められており、そこに浴衣のまま埋まります。目の前が海で、波の音を聞きながら砂の重みと熱を受けることになります。
天候に左右される
海に面した露天風呂には、共通する条件があります。
屋根がないぶん、波が高い日や荒天時は入れません。台風の時期はもちろん、冬の季節風が強い日にも止まることがあります。指宿の砂むしも同じで、波が高いと屋外の砂むし場が使えず、屋内に変わります。
行程の中心に置くなら、当日の状況を確認してから動いてください。屋内の浴場を持つ施設なら、閉まっていたときの逃げ道になります。
湖に面した湯
湖は海より条件が穏やかです。波がなく、天候の影響も小さくなります。
洞爺湖はカルデラ湖で、ほぼ円形の湖の中央に中島が浮かびます。湖越しに羊蹄山が見え、この構図が洞爺湖の代表的な景色になっています。湖は凍らないので、冬でも雪の中に水面が見えます。
例年春から秋にかけて、長期間にわたり湖上花火大会が開かれます。船から打ち上げるため、湖畔の広い範囲から見られます。
色の変わる湖
片山津温泉は柴山潟という湖に面しています。
湖面の色が時間とともに変わります。朝と夕方、晴天と曇天で見え方が違うため、一日に何度も表情が変わる湖として知られてきました。
この湯も、もとは湖の中から湧いていました。1653年に加賀藩三代藩主の前田利常が鷹狩りの際に見つけたと伝わり、明治期の埋め立てを経て今の温泉地の形になっています。
天気のよい日は、湖の向こうに白山が見えます。冬は雪をかぶった稜線が水面の先に並びます。ただし北陸の冬は曇りの日が多いので、見えたら運がよいと考えたほうがよいでしょう。
海から湧いた湯
和倉温泉の源泉は、もともと海のなかから湧いていました。漁師が海面に湧く湯を見つけたのが始まりと伝えられ、のちに埋め立てて今の温泉地の形になっています。
そのため湯には海水由来の塩分が濃く含まれ、なめると明確に塩辛い。塩分が肌に膜をつくって汗の蒸発を抑えるため、保温効果が非常に高くなります。
海に由来する湯が、海からの風に耐えるための湯になっている。この対応が分かると、日本海側の冬にこの湯が効く理由も納得できます。
なお和倉温泉は2024年1月の能登半島地震で大きな被害を受けました。宿ごとに再開の状況が異なるため、訪れる前に必ず確認してください。
街と海が近い温泉地
湯の川温泉は津軽海峡に面しており、海に向いた宿が並びます。函館空港から車で5分、市電が温泉街に乗り入れているので、海を見て湯に入り、そのまま市街へ出られます。
熱海は相模湾に面しています。MOA美術館は湾を見下ろす高台にあり、長いエスカレーターで上がる構造そのものが体験になっています。海上花火大会は夏に限らず年間を通じて複数回開かれ、三方を山に囲まれた湾が音を反響させます。
塩化物泉が多い
海に近い温泉地には、共通する泉質があります。
白浜、指宿、和倉、湯の川、熱海。いずれも塩分を含む塩化物泉です。海のそばで湧く湯は塩分を含みやすく、その結果として保温性が高くなります。
湯上がりに体が冷めにくいので、海風に当たっても寒くなりません。景色と泉質が噛み合っている、という言い方ができます。
選ぶときに
- 屋外の露天は天候で閉まります。屋内の浴場があるかを確認してください
- 部屋から見えるかどうかは、部屋の向きで決まります。同じ宿でも差があります
- 海に面した湯は塩分が濃いことが多く、湯上がりに真水で流すと肌への負担が軽くなります
- 湖の湯は波の影響を受けません。天候の読みにくい季節なら湖のほうが確実です












