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帳場で鍵を受け取り、案内された先で階段を下りる。下りるほど天井が高くなっていく。降りきると視界が開けて、岩に囲まれた湯船が現れる。ここが白猿の湯である。
立ったまま入る
深さおよそ1.25メートル。腰を下ろすことができない。
湯に入ると、肩まで浸かったまま足の裏が岩に触れている。座って入る風呂に慣れた体は、最初その姿勢に戸惑う。しばらくして、足元から気泡が上がってくるのに気づく。湯船の底そのものが源泉で、岩の隙間から湧いている。
宿はこう説明している。通常、源泉かけ流しの温泉でも源泉が湧いている場所からポンプを使いお風呂まで運ぶのが普通ですが、この白猿の湯は読んで字のごとく「その場所」に温泉が湧いています、と。ポンプで送れば湯は酸素に触れて酸化し成分が変わってしまうが、ここにはその工程がない、という理屈である。
天然の岩を人力で掘って造った湯船だと宿は書いている。吹き抜けの天井は高く、湯気がまっすぐ上へ抜けていく。声が反響する。
混浴だが女性専用の時間帯がある。6時から7時、11時から13時、20時から22時。金曜の10時から14時は清掃のため使えない。
四つの湯
白猿の湯のほかに、桂の湯、白糸の湯、銀の湯がある。造りも湯の温度も違う。
桂の湯は大きな窓のある内湯に露天風呂が付く。宿は、外に出れば露天風呂から渓流のせせらぎが聞こえ、川岸にもう一つ設けた露天風呂では自然の一部になったかのような感覚になると書いている。男女別である。
白糸の湯は展望半露天風呂で、窓から白糸の滝が見える。宿は、白糸のごとく岩肌をつたって豊沢川に注ぐ滝だとし、まるで絵画のような景色だとしている。7時から10時と15時から17時が女性専用、11時から15時と17時から翌6時が男性専用。時間で男女が入れ替わるので、入りたければ時計を見ておくことになる。
銀の湯は家族やカップルで貸し切れる。夏は深緑、秋は紅葉を眺められる小ぶりな風呂である。
一泊のあいだに全部に入ろうとすると忙しい。どれか一つを繰り返し使うほうが、この宿の湯の性格が分かる。
沸かさず、薄めず、循環させず
宿は湯の扱いを三つの言葉で書いている。
当館では岩手の大地から湧き出た温泉を、「沸かさず(加熱)」、「薄めず(加水)」、「循環させず(かけ流し)」皆様の元へお届けしております、と。
源泉は5本ある。宿は、有名といわれる温泉地でさえも滅多にない本数だとし、館内の4浴場すべてが源泉100パーセントのかけ流しで、シャワーから出てくる湯までが源泉だと書いている。
泉質は単純温泉・アルカリ性単純高温泉で57度。楽天トラベルの施設情報ではアルカリ単純泉、弱アルカリ単純泉、低張性弱アルカリ性泉と登録されている。効能として宿は、神経痛、リウマチ、胃腸病、筋肉痛、関節痛、皮膚病、神経性疾患、婦人病、糖尿病、肥満、じ疾、小児疾患、循環器疾患、呼吸器疾患、病後保養などを挙げている。効き方は人によるので、体のことで気になる点があれば医師に確かめておきたい。
宿は、この湯が「新日本百名湯」「日本温泉遺産」「日本百名湯」に選ばれていると書いている。
総けやき造りの本館
宿は建物をこう書いている。現代では再現することのできない、総けやき造りの本館、と。
温泉としての歴史は600年以上、温泉旅館としても230年以上だという。創業は1786年、大衆の浴場として長屋を建てたのが始まりである。白猿の伝説から始まる温泉地そのものの来歴は、温泉地の記事に書いた。
木造の古い建物なので、部屋の造りは現代のホテルとは違う。総部屋数は32室である。
旅館部と湯治部
同じ建物のなかに、旅館として泊まる区画と、自炊の湯治部がある。
湯治部には台所があり、直通の電話番号も別にある。長期滞在の客が米と鍋を持ち込んで、自分で食事を作る。かつて岩手の農家が農閑期に来ていた湯治の形が、そのまま続いている。
宿は、湯治部に泊まる客の旅館部への入館は入浴のみで、貸切風呂の銀の湯は利用できないと書いている。おひとり様や一泊でも泊まれるとしている。
廊下ですれ違う人の目的が自分とは違う、という感覚がある。観光で来た自分と、体を治しに来た人が同じ湯を使っている。
文学の宿
田宮虎彦の小説「銀心中」はこの宿で書かれた。
宿は、田宮が一か月あまりのあいだ玄関上の三階の20号室に逗留して執筆したと伝えている。その部屋は今も残っている。
宮沢賢治は当家との遠戚関係からよく訪れていたという。賢治の童話に出てくる「鉛の湯」がこの湯である。花巻の宮沢賢治記念館とあわせて回れる。
着くまで
新花巻駅から40分、花巻駅から30分。送迎バスがあり、協力金は片道100円、予約が必須だと宿は書いている。車なら花巻南ICから20分である。
日帰り入浴も受け入れているが、館内メンテナンスで休む日がある。公式サイトに休館日の案内が出る。
食事には花巻産の野菜と米、地元の山菜やきのこ、三陸の海の幸を使うと宿は書いている。設備の快適さではなく、湯そのものと建物の来歴に惹かれる方に向く宿である。
鉛温泉 藤三旅館のよくある質問
Q藤三旅館の湯はかけ流しですか?
宿は「当館では岩手の大地から湧き出た温泉を、『沸かさず(加熱)』、『薄めず(加水)』、『循環させず(かけ流し)』皆様の元へお届けしております」と書いています。源泉は5本あり、館内の4浴場すべてが源泉100パーセントのかけ流しで、シャワーから出てくる湯まで源泉だとしています。
Qお風呂はいくつありますか?
4つです。立居浴専用の白猿の湯、露天のある桂の湯、展望半露天の白糸の湯、貸切にできる銀の湯です。白猿の湯は混浴で、6時から7時、11時から13時、20時から22時が女性専用、金曜10時から14時は清掃のため使えないと宿は書いています。
Q貸切風呂はありますか?
あります。銀の湯が家族やカップルで貸し切れる風呂だと宿は書いています。楽天トラベルの施設ページでは時間帯貸切風呂と案内されています。なお宿は、湯治部に泊まる客の旅館部への入館は入浴のみで、銀の湯は利用できないとしています。
Q白糸の湯からは何が見えますか?
宿は、展望半露天風呂の窓から白糸のごとく岩肌をつたって豊沢川に注ぐ白糸の滝が望めると書いています。7時から10時と15時から17時が女性専用、11時から15時と17時から翌6時が男性専用です。
Q一人でも泊まれますか?
泊まれます。宿は楽天トラベルの施設ページで、おひとり様や一泊でも大丈夫だと案内しています。自炊の湯治部があり、長く滞在する客と一泊の客が同じ湯を使っています。
Q送迎はありますか?
あります。宿は、新花巻駅より40分・花巻駅より30分で送迎バスがあるとし、協力金は片道100円、予約が必須だと書いています。花巻南ICからは車で20分です。
似た条件の宿
この宿と共通する条件を持つ、別の温泉地の宿です。並びは共通する条件の数で、順位ではありません。

奥飛騨百姓座敷の宿 藤屋
岐阜県岐阜県高山市奥飛騨温泉郷一重ヶ根、新平湯温泉のほぼ中央に建つ宿。築二百年の百姓座敷は移築ではなく、実際に百姓座敷として使っていた建物をそのまま使っていると公式サイトは書く。日本源泉湯宿を守る会に提出した調査表では加水も加温も循環もなしと開示している。源泉は一重ケ根温泉1号泉、湧出地の泉温130度を低温泉と混ぜて調整している。貸切露天が二つ、24時間無料。

強首温泉 樅峰苑
秋田県大正6年(1917年)築の小山田家邸宅、昭和41年(1966年)から宿大正6年に大庄屋・小山田家の12代当主が建てた屋敷をそのまま宿にした、国登録有形文化財の7室。千鳥破風と唐破風を重ねた玄関、16メートルの秋田杉の一枚板の廊下、鹿鳴館風の階段室。平成20年に敷地内で掘り当てた含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉を、加水・加温なしで檜の大浴場と、樹齢380年の樅の木を望む総檜の貸切露天二つにかけ流す。雄物川のモクズガニの川蟹料理。中学生以上、車椅子は不可。日帰りは檜風呂のみ。峰吉川駅から送迎、秋田空港から16分。

青根温泉 湯元不忘閣
宮城県慶長年間に湯別当として始まり、当主は21代続くと日本秘湯を守る会に登録している宮城県柴田郡川崎町青根温泉1-1。伊達政宗が訪れた際に「この地忘れまじ」と名付けたと伝わる、仙台藩一門の湯治湯。川崎町は本館・離れ・門・蔵など計7棟が国の登録有形文化財と書く。土蔵の中に造られた蔵湯、木造建築と石風呂が調和する大湯など六つの湯屋があり、蔵湯と半露天の亥之輔の湯は貸切で使える。泉質は単純温泉、加水・加温なしの源泉かけ流し。全14室。日帰り入浴は受けていない。
※ 料金・空室・設備・営業状況は変わります。当サイトが掲載しているのは創業年や建築など変わりにくい情報のみです。 最新の情報は予約サイト、または公式サイトでご確認ください。
