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雪が舞うなかで湯に浸かる。温泉地の宣伝写真で最もよく使われる光景ですが、実際にそれが成立する条件は限られています。
必要なのは三つ。十分な積雪、露天風呂、そして冬にたどり着けるアクセスです。この三つが揃う温泉地は、思ったより多くありません。
積雪量で選ぶ
雪見露天を目的にするなら、東北・北陸・北海道・信州の山間部が確実です。乳頭温泉郷、銀山温泉、蔵王温泉、白骨温泉あたりは、屋根の高さまで雪が積もる年もあります。
一方、関東や東海の温泉地は雪が降っても積もらないことが多く、「運が良ければ」という条件付きになります。確実性を求めるなら緯度と標高を上げてください。
見頃の時期
例年、1月中旬から2月中旬が最も積雪が安定します。12月は根雪になっていないことがあり、3月に入ると解け始めます。
年末年始は宿泊料金が最も高くなる時期でもあるため、雪の確実性と費用の両方を考えると1月中旬から下旬あたりが現実的です。
冬に行くときの現実的な話
アクセスが読めない — 積雪は道路と鉄道の両方に影響します。この点は後段でまとめます。
車で行くならタイヤは必須 — スタッドレスなしで山間部の温泉地に向かうのは無謀です。レンタカーの場合は冬用タイヤ装着車を指定してください。
マイカー規制がある温泉地もある — 銀山温泉のように、冬季は温泉街への一般車両の乗り入れが制限される場所があります。宿の送迎や駐車場の運用を事前に確認してください。
湯冷めしやすい — 外気温が氷点下だと、湯上がりの体温は一気に奪われます。塩化物泉や硫酸塩泉といった保温性の高い泉質を選ぶと、この点で有利になります。
泉質と組み合わせる
冬に効くのは保温性です。塩分を含む塩化物泉は肌に膜をつくって熱を閉じ込めるため、「熱の湯」とも呼ばれます。銀山温泉や定山渓温泉がこの系統です。
白濁した硫黄泉は、雪の白と湯の白が重なる絵になります。乳頭温泉郷や蔵王温泉が代表格で、写真を撮る目的なら硫黄泉を選ぶ手もあります。
確実性の高い温泉地
雪の量で選ぶなら、豪雪地帯と呼ばれる場所が確実です。
八甲田の酸ヶ湯は積雪量が数メートルに達します。奥飛騨温泉郷、乳頭温泉郷、野沢温泉、越後湯沢も同じ系統です。万座温泉は標高およそ1,800メートルにあり、雪と高地の空気の両方が揃います。
蔵王温泉は樹氷で知られ、最盛期は例年1月下旬から2月。山の上と湯の中の温度差が、そのまま一日の設計になります。
銀山温泉は雪の量に加えて、ガス灯が雪面に反射する時間帯が加わります。この光景を見るには泊まっているしかありません。
北の雪、谷の雪
層雲峡温泉は大雪山の懐にある。石狩川が溶岩台地を削った谷で、柱状節理の断崖がおよそ24キロ続く。例年1月下旬から3月中旬にかけて河川敷で氷瀑まつりが開かれ、氷のドームに照明が入る。旭川周辺は氷点下20度を下回る日があり、屋外に長くいる前提の服装が要る。
宇奈月温泉は黒部峡谷の入口にある。冬はトロッコ電車が運休するため、峡谷の奥までは入れない。そのぶん温泉街は静かになる。雪を見るために行くなら、電車が動く季節とは別の目的で組むことになる。
露天風呂があるかを確認する
雪見露天は「雪」と「露天」の両方が要ります。当たり前のようですが、ここで外すことがあります。
同じ温泉地でも、露天風呂を持つ宿と持たない宿があります。冬季は露天風呂の営業形態が変わる宿もあります。
また、屋根がある半露天では雪が落ちてきません。雪が舞うなかで湯に入るという構図を求めるなら、屋根の有無まで確認することになります。
湯に入る前後の実務
外気温が氷点下の露天風呂は、入るまでと出てからが大変です。
- 脱衣所から湯船まで屋外を歩く造りの宿があります。足元が凍っていることがあるので、急がないでください
- 髪が濡れたまま外に出ると凍ります。湯上がりは屋内で乾かしてから移動してください
- 眼鏡は湯気で曇り、外気で一気に冷えます
- 保温性の高い塩化物泉や硫酸塩泉なら、湯上がりの体温が保たれます。単純温泉より冬向きです
- 白濁した湯は底が見えません。雪で滑りやすくなっている段差に注意してください
冬の行程は余裕を見る
積雪は道路と鉄道の両方に影響します。特急が運休する、バスが減便される、道路が通行止めになる。
一日の余裕を旅程に入れておかないと、予定が崩れたときに立て直せません。乗り継ぎを詰めた行程は、冬には向きません。
宿の送迎があるかどうかも大きく効きます。駅から宿まで数百メートルでも、吹雪のなかを荷物を持って歩くのは別の話になります。














