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銀山温泉のどの写真にも、まずこの建物が写っている。川沿いに立つ三層の木造に、望楼が乗っている。到着したときより、日が落ちてからのほうが強く印象に残る。
建物のなかにいる
本館は1921年、大正10年の建築である。国の登録有形文化財に登録されている。
廊下を歩くと床が鳴る。天井は低く、階段は急で幅が狭い。窓の高さも今の建物とは違う。不便といえば不便だが、百年前の旅館がどういう空間だったかを、説明ではなく体で確かめることになる。
外壁には鏝絵がある。左官職人が漆喰で描いた浮き彫りで、宿の外に出て見上げると分かる。
夜を待つ
この宿に泊まる理由は、夜にある。
日が落ちるとガス灯に火が入る。電灯の白い光ではなく、炎の色をした灯りが川の両岸に並ぶ。雪が積もっていれば、その光が雪面に反射して、街全体が淡く光る時間帯が訪れる。
日中は狭い通りに人があふれる。その人たちが引いたあと、宿泊した人だけが残る。同じ場所とは思えないほど静かになる。
朝も同じで、除雪の音がするだけの通りを歩けるのは泊まった人だけだ。
湯
含硫黄-ナトリウム・塩化物泉。硫黄の香りをまといながら、塩化物泉としての保温性を併せ持つ。約63℃で湧く。
湯から上がって浴衣で廊下を歩いても、体が冷めにくい。雪深い土地の湯として理にかなっている。
浴場は男女の大浴場のほかに二つある。一つは開業時から元湯として使われてきた洞窟風呂で、現在は貸切で使えると宿は案内している。もう一つは高台へ長い階段を上った先の展望露天風呂で、白銀の滝を望むと宿は述べているが、12月から4月頃は雪で閉鎖される。2025年10月には近隣で熊の出没が報告されたため、その期は閉鎖すると宿は告知した。露天を目的にするなら、予約前に使えるかを宿へ確かめたい。
客室は和室15室。予約は公式サイトの予約ページからに限り、電話やメールでは受けないと宿は明記している。
一泊二日の配分
銀山温泉は狭い。徒歩10分ほどで端から端まで歩ける。だからこそ、時間帯の使い方で中身が決まる。
初日の午後に到着して、明るいうちに街を一巡する。夕方から夜にかけてガス灯の時間になる。翌朝、人が来る前に同じ通りを歩く。
昼過ぎに発てば、尾花沢から山形市内や蔵王へ抜けられる。山形の温泉を続けて回る行程が組める。
建物が残った理由
三層四層に積み上げられた木造建築は、現在の建築基準では新しく建てることができない。同じものを作り直せないという事実が、この宿の価値を決めている。
保存しようという意思が先にあったというより、建て替える機会を逸したまま残った側面がある。その結果として、百年前の旅館の空間がそのまま使われ続けている。
なお、この地はかつて銀山として栄えた土地で、温泉は坑夫が発見したと伝わる。宿の歴史は鉱山の歴史の上に重なっている。
この宿を選ぶなら
ガス灯の夜と、人が来る前の朝。この二つを目的にする方に向く。建物は百年前のもので、床は鳴り、階段は急である。設備の新しさを求めるなら合わない。
冬季は温泉街への一般車両の乗り入れが制限される。手前の駐車場から入る運用になるのが通例だが、年によって変わるので宿に確認したい。
能登屋旅館のよくある質問
Q能登屋旅館に露天風呂はありますか?
高台へ階段を上った先に展望露天風呂(貸切)がありますが、冬期間の12月から4月頃は雪のため閉鎖と宿は案内しています。2025年10月には近隣で熊の出没が報告されたため、その期は閉鎖するとも告知しています。使えるかどうかは予約前に宿へ確かめてください。
Q能登屋旅館の洞窟風呂とは?
開業時から元湯として使われてきた浴室で、現在は貸切風呂として使えると宿は案内しています。男女の大浴場とは別にあります。
Q能登屋旅館の予約方法は?
予約は公式サイトの予約ページからに限り、電話やメール、本人以外の代理人による予約は受けていないと宿は明記しています。
似た条件の宿
この宿と共通する条件を持つ、別の温泉地の宿です。並びは共通する条件の数で、順位ではありません。

青根温泉 湯元不忘閣
宮城県慶長年間に湯別当として始まり、当主は21代続くと日本秘湯を守る会に登録している宮城県柴田郡川崎町青根温泉1-1。伊達政宗が訪れた際に「この地忘れまじ」と名付けたと伝わる、仙台藩一門の湯治湯。川崎町は本館・離れ・門・蔵など計7棟が国の登録有形文化財と書く。土蔵の中に造られた蔵湯、木造建築と石風呂が調和する大湯など六つの湯屋があり、蔵湯と半露天の亥之輔の湯は貸切で使える。泉質は単純温泉、加水・加温なしの源泉かけ流し。全14室。日帰り入浴は受けていない。

奥飛騨百姓座敷の宿 藤屋
岐阜県岐阜県高山市奥飛騨温泉郷一重ヶ根、新平湯温泉のほぼ中央に建つ宿。築二百年の百姓座敷は移築ではなく、実際に百姓座敷として使っていた建物をそのまま使っていると公式サイトは書く。日本源泉湯宿を守る会に提出した調査表では加水も加温も循環もなしと開示している。源泉は一重ケ根温泉1号泉、湧出地の泉温130度を低温泉と混ぜて調整している。貸切露天が二つ、24時間無料。

塔之沢温泉 福住楼
神奈川県1890年(明治23年)創業明治23年に塔之澤で創業した17室の宿。建物は登録有形文化財で、日本イコモス国内委員会の「日本の20世紀遺産20選」に箱根の大規模木造宿泊施設群のひとつとして選ばれている。松の幹をくり抜いた大丸風呂がある。箱根湯本駅から徒歩10分。
※ 料金・空室・設備・営業状況は変わります。当サイトが掲載しているのは創業年や建築など変わりにくい情報のみです。 最新の情報は予約サイト、または公式サイトでご確認ください。
