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森を抜け、沢を横切ってくる湯
網張温泉は岩手県岩手郡雫石町、岩手山の南麓にある。休暇村の敷地内にある五か所の温泉をまとめて網張温泉と呼ぶ、というのが宿の説明だ。
湯の来方が変わっている。元湯は2キロほど山を登った犬倉山の爆裂火口跡にある。そこでは高温の蒸気が噴き出していて、流れ込む沢水を混ぜて温泉をつくる湯井が設けてある。その湯を引湯管で下まで引いてくる。
管に湯花が付着して詰まるのを防ぐため、年に数回パイプ掃除をする。宿は「かなりの重労働で、積雪期には雪崩の危険もあります」と書いている。元湯そのものは硫化水素ガスが発生するため立入禁止だ。
季節で色が変わる
この温泉の面白さは、湯の色が季節で変わることにある。
宿の説明を借りる。網張温泉の青味がかった白濁は硫化水素のイオン分解反応によって起こる。この反応は源泉と沢水が混ざる際の温度によって異なる。雪解け水が豊富な春、一定の降雨がある夏から秋は、イオン分解反応が促進されて白く濁り匂いも立ち込める。積雪によって沢の水が細くなる冬は源泉の温度が高温になり反応が鈍るため、無色に近くなり匂いも薄くなる——。
同じ湯に夏と冬に入ると、別の温泉のように見えるということだ。泉質は単純温泉/硫黄泉(硫化水素型)、pHは4.1の弱酸性。
浴室は硫化水素ガスの充満を防ぐため、一般の浴室より強めに換気していると宿は断っている。寒く感じても湯にしっかり浸かって温まってほしい、と。
網張五湯
五つの湯がある。
本館には内湯と露天のある「大釈の湯」と、内湯の「白泉の湯」。吊り橋を渡った先の日帰り施設「温泉館 薬師の湯」には内湯と露天があり、露天からは眼下の山裾の先に雫石の田園風景が見える。
森の中を歩いて7分の沢沿いにあるのが野天風呂「仙女の湯」。滝を背景に立ち上る湯けむりを羽衣をまとった仙女に見立てたのが名の由来という。男女別の脱衣小屋を抜けると岩を積み上げた湯船がひとつ、男女混浴だ。湯あみ着を使える。
五つめが「鹿追足湯」。仙女の湯とあわせて冬期は閉鎖される。
網を張った土地
名前の由来に二つの説がある。宿はどちらも紹介している。
ひとつは、魑魅魍魎から守るため蔓草の網を張ったという言い伝え。もうひとつは、明治以前の山岳信仰の時代に、一般の人が立ち入らぬよう南部藩が網を張っていたという話。どちらにしても「立ち入らせない場所」だったことになる。
人が入れるようになったのは明治初期で、現在の滝沢市の澤村氏が大釈温泉の名で湯治場を開いたのがはじまりだと宿は書く。諸病に効くという評判が麓の村々に伝わり、温泉を目指す人々の松明で登山道が照らし出されたほどだったという。
小岩井農場の創設者の一人である井上勝がこの湯へ向かう道中で農場開発の着想を得た、宮澤賢治もこの湯に浸かった記録を残している、とも紹介されている。
松川温泉とは別
同じ岩手山の周りでも、松川温泉とは別の温泉である。松川は岩手山の北側、八幡平の登山口にある白濁の硫黄泉で、地熱発電所が近い。網張は南側、雫石の側で、スキー場とリフトのあるリゾートとしての顔も持つ。車で1時間ほど離れている。
湯以外の見どころ
岩手山の登山口がここにある。グリーンシーズンは「天空のリフト」で標高を稼げるので、体力に自信がなくても展望まで上がれる。
小岩井農場までは車で30分ほど。一本桜と赤い屋根のサイロで知られ、井上勝の話とつながる場所でもある。雫石の田園と岩手山を一度に見たいなら、この組み合わせがいい。
着くまで
JR盛岡駅から宿泊者専用の無料シャトルバスが出ている(要予約)。車なら東北自動車道の盛岡ICから40分ほど。
東京から盛岡までは東北新幹線で2時間ちょっと。そこからシャトルバスに乗れば、乗り換えは実質一度きりになる。
網張温泉の日帰り入浴
- 日帰り温泉館「薬師の湯」
- 野天風呂「仙女の湯」
- 小岩井農場
仙女の湯と鹿追足湯は冬期閉鎖、雨天も中止です。営業期間を確かめてから向かってください。
受付時間・定休日・料金は施設ごとに異なり、変更されることもあります。 お出かけの前に各施設の案内をご確認ください。
温泉地カルテ
4.1弱酸性
0 酸性7アルカリ性 14
秋・夏
- 所在地Location
- 岩手県
- 泉質Spring Quality
- 硫黄泉・単純温泉
- 最寄駅Nearest Station
- JR盛岡駅(宿泊者専用の無料シャトルバス・要予約)/東北道 盛岡IC(車約40分)
- 東京からFrom Tokyo
- 約3時間30分
- 大阪からFrom Osaka
- 約6時間30分
※ 泉質・泉温・pH は代表的な源泉の値です。施設ごとに異なる場合があります。 効能は泉質の一般的な適応症であり、効果を保証するものではありません。
網張温泉のよくある質問
Q網張温泉の泉質は?
宿は泉質を単純温泉/硫黄泉(硫化水素型)、pH値を4.1(弱酸性)と案内しています。効能にアトピー性皮膚炎、末梢神経障害、尋常性乾癬を挙げています。効き方は人によるので、気になることは医師に確かめてください。
Q湯の色が変わると聞きました。
変わります。宿は、青味がかった白濁は硫化水素のイオン分解反応によるもので、源泉と沢水が混ざる際の温度で反応が変わると説明しています。雪解け水が豊富な春、一定の降雨がある夏から秋はイオン分解反応が促進されて白く濁り匂いも立ち込め、積雪で沢の水が細くなる冬は源泉の温度が高くなって反応が鈍るため無色に近くなり匂いも薄くなるとしています。
Q網張五湯とは何ですか?
本館の内湯と露天「大釈の湯」、内湯の「白泉の湯」、日帰り温泉「薬師の湯」(内湯と露天)、野天風呂の「仙女の湯」(冬期閉鎖)、「鹿追足湯」(冬期閉鎖)の五か所の総称です。岩手山の旧火口から湧く湯が、森を抜け沢を横切り約2キロの引湯管を通って五つの風呂に分けられると宿は書いています。
Q「網張」という名前の由来は?
宿は二つの説を挙げています。ひとつは、魑魅魍魎から守るため蔓草の網を張ったという言い伝えから、いつしかこの地を網張と呼ぶようになったという説。もうひとつは、明治以前は山岳信仰が盛んで、一般の人が立ち入らぬよう南部藩が網を張っていたという話です。
Q仙女の湯には誰でも入れますか?
野天風呂で、ホテル玄関から森の中を歩いて約7分の沢沿いにあります。男女別の脱衣小屋を抜けると岩を積み上げた湯船がひとつあり、男女混浴です。湯あみ着の販売があり、持参したものでも入れます。11月上旬から5月中旬は冬期閉鎖、雨天も中止。定員は10人で、フロントに声をかけてから向かう決まりです。
ほかの温泉地と比べる
UPDATED 2026.09.23



