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花巻温泉郷は一つの温泉地ではない。豊沢川と台川の谷に、十二の温泉地が点在している。
花巻温泉、台温泉、鉛温泉、大沢温泉、志戸平温泉、渡り温泉——大型の宿が並ぶ地区もあれば、自炊部を残す湯治宿もある。同じ「花巻」でも、選ぶ地区で旅の形が変わる。
立って入る風呂
鉛温泉に白猿の湯という浴槽がある。深さおよそ1.25メートル。座って入ることができず、立ったまま浸かる。
足元の岩盤から湯が湧く岩風呂で、天井の高い吹き抜けの空間にある。この形の浴槽は全国でも珍しい。湯船の底から直接湯が上がってくるため、湯の鮮度が高い。
傷ついた白猿がこの湯で傷を癒していたという開湯伝説が、名の由来になっている。
湯治の形が残る
花巻温泉郷には、自炊部を持つ宿が今も残っている。
台所があり、長期滞在の客が自分で食事を作る。かつて東北の農村で当たり前だった湯治の形が、そのまま続いている。
観光地化した地区と、湯治宿の地区が同じ谷に共存している。この落差が花巻の面白さである。
宮沢賢治の土地
花巻は宮沢賢治の生まれ育った土地である。
宮沢賢治記念館、賢治が設計した花壇の残る羅須地人協会跡、童話村が市内にある。温泉郷から車で回れる距離だ。
賢治自身もこの一帯の湯を歩いている。作品の背景にある岩手の風土を、湯とあわせて辿ることができる。
この温泉地の湯
地区によって泉質が異なる。単純温泉、硫酸塩泉、塩化物泉。無色透明の湯が中心で、刺激は強くない。
自炊部という選択肢
花巻には、湯治のための部屋を今も残している宿がある。
自炊部は、旅館部とは料金も設えも違う。食事が付かず、台所を共同で使い、寝具や暖房が別料金という形が一般的である。設備は簡素で、部屋に何もないことも多い。
これは安く泊まる手段としてではなく、湯に長く入るための形として残ってきたものである。かつて東北の農閑期には、米を持ち込んで何週間も滞在する客がいた。大沢温泉などにその姿を見ることができる。
一泊でも泊まれるが、旅館の快適さを期待して入ると戸惑う。何を目的にその部屋を取るのかを、先に決めておくことになる。
どの地区を選ぶか
花巻温泉郷は十二の温泉地に分かれており、地区ごとに性格が違う。
花巻温泉や志戸平温泉には大型の宿が並び、設備が整っている。家族連れや、移動を減らしたい行程に向く。
鉛温泉には立って入る白猿の湯がある。深さおよそ1.25メートルの岩風呂で、湯船の底から直接湯が上がってくる。湯そのものを目的にするならここになる。
大沢温泉や台温泉には湯治宿の空気が残っている。大沢温泉は一軒宿が三つの館に分かれていて、食事の付く旅館と自炊の湯治屋のどちらにも泊まれる。
鉛温泉、大沢温泉、志戸平温泉については、それぞれ個別の記事を書いた。湯の引き方も宿の造りも地区ごとに違うので、泊まる前にそちらを見てほしい。
地区の間はバスか車での移動になる。歩ける距離ではないので、「花巻に泊まる」ではなく「どの地区に泊まる」を先に決めることになる。
賢治を辿る
宮沢賢治記念館、羅須地人協会跡、童話村。いずれも市内にあり、温泉郷から車で回れる。
賢治は農学校の教師として働きながら、この一帯を歩いていた。作品に出てくる風景の多くは、実在の場所を下敷きにしている。
湯だけを目的にすると、花巻は移動時間の長い温泉地になる。賢治の土地を回るという軸を足すと、一日の中身が変わる。平泉の中尊寺までは車で一時間ほど、遠野も同じ範囲にある。
歩き方
JR東北新幹線の新花巻駅からバスで30分ほど。東京から合計3時間30分ほどで着く。
地区の間はバスか車での移動になる。歩ける距離ではないので、どの地区に泊まるかを先に決めたい。
花巻温泉郷の日帰り入浴
- 各地区の宿の日帰り入浴
- 湯治宿の浴場
受付時間・定休日・料金は施設ごとに異なり、変更されることもあります。 お出かけの前に各施設の案内をご確認ください。
温泉地カルテ
秋
- 所在地Location
- 岩手県
- 泉質Spring Quality
- 単純温泉・硫酸塩泉・塩化物泉
- 最寄駅Nearest Station
- JR東北新幹線 新花巻駅(バス約30分)
- 東京からFrom Tokyo
- 約3時間30分
- 大阪からFrom Osaka
- 約6時間30分
※ 泉質・泉温・pH は代表的な源泉の値です。施設ごとに異なる場合があります。 効能は泉質の一般的な適応症であり、効果を保証するものではありません。
花巻温泉郷のよくある質問
Q花巻温泉郷は日帰りでも入れますか?
入れます。各地区に日帰り入浴を受け入れている宿があります。新花巻駅からバスで30分ほど、東京から新幹線でおよそ3時間で着きます。地区によって湯が異なるため、一日で二か所ほど回ると花巻の幅が体験できます。
Q花巻温泉郷にはいくつの温泉地がありますか?
十二の温泉地からなります。花巻温泉、台温泉、鉛温泉、大沢温泉、志戸平温泉、渡り温泉などが豊沢川と台川の谷に点在しています。大型の宿が並ぶ地区もあれば、自炊部を残す湯治宿もあり、性格が大きく分かれています。
Q白猿の湯とはどんな風呂ですか?
鉛温泉にある深さおよそ1.25メートルの湯船で、立ったまま入ります。足元の岩盤から湯が湧く岩風呂で、天井の高い吹き抜けの空間にあります。深さのため座って入ることができず、この形の浴槽は全国でも珍しいものです。
Q宮沢賢治ゆかりの場所はありますか?
花巻は宮沢賢治の生まれ育った土地です。宮沢賢治記念館、賢治が設計した花壇の残る羅須地人協会跡、童話村などが市内にあります。温泉郷から車で回れる距離にあり、湯とあわせた行程が組めます。
ほかの温泉地と比べる
UPDATED 2026.10.03



