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杖が大杉になった話
宝泉寺温泉は大分県玖珠郡九重町、町田川の谷にある。
開湯の伝えを、九重町が公式サイトにそのまま載せている。
「天慶元年(938)、空也上人が諸国巡錫の途中、一猟師に会い、奇蹟を予言して持っていた杖を大地につきさして去った。その杉が大杉となり、天禄三年(972)、大地震がおこり、大杉の根本より突然温泉が湧出し始めた」。
杖を刺す、という筋は全国にある。弘法大師の杖が多い。ここは空也上人で、しかも湯が出るまでに34年かかっている。
九重町観光協会はその続きも書いている。驚いた村人たちが湯のほとりに寺を建て、上人が宝の泉を下さったことから平原山宝泉寺と名づけ、本尊に空也上人と大日如来を安置した。
「現在、寺はありませんが山間の静かな温泉場として賑わっています」。
寺は消えて、名前だけが温泉地に残った。
温泉地として、かけ流しを宣言した
宝泉寺温泉のいちばんはっきりした特徴は、宿ごとではなく温泉地としてかけ流しを宣言していることだ。
宿の一軒はこう書いている。「宝泉寺温泉郷は素晴らしい名湯と、温泉地としての原風景を後世に残していくため、平成21年に『源泉かけ流し』宣言を行い、温泉文化の継承と創出に努めております」。
九重町も公式サイトで、宝泉寺温泉の項に「3種類のホタルの舞うこの美しい温泉地を後世に残していく為『源泉かけ流し宣言』を行っています」と書いている。
2009年のことだ。全国で温泉の表示をめぐる問題が続いたあとの時期にあたる。
ただし、個々の宿がどう湯を扱っているかは宿ごとに確かめたほうがいい。宣言は温泉地の姿勢であって、一軒ごとの分析書ではない。
毎分二千リットル
日本温泉協会は宝泉寺温泉をこう紹介している。「空也上人が約1000年前に開いたと伝えられる古湯。源泉も多く、湯量豊富。夜になると浴衣姿が多く見られ、情緒深い」。
泉質は単純温泉。泉質別適応症として、自律神経不安定症、不眠症、うつ状態が挙げられている。
宿の一軒は、温泉郷全体で毎分2,000リットル以上の湧出量があり、無色透明で入りやすい湯だとしている。
単純温泉は成分が薄いという意味ではなく、含まれる量が規定に届かないというだけの分類だ。刺激が少なく、長く入っていられる。
ホタルが出る川
温泉街を町田川が流れている。
九重町は「3種類のホタルの舞う」と書き、宿の一軒は5月下旬から6月初旬にゲンジボタルが姿を見せ、露天風呂から見られると案内している。
ホタルが出るということは、川の水がきれいで、農薬の影響が少なく、川岸がコンクリートで固められていないということだ。温泉地の景観の話でもある。
時期は年によって前後する。狙って行くなら、直前に宿へ聞いたほうが確実だ。
菅原道真が隠れたという伝え
九重町観光協会は、開湯伝説のあとにもうひとつ短い話を添えている。
「延喜元年(901)菅原道真が太宰府に流される際、一時刺客をのがれ身を隠していたと言われています」。
延喜元年は、湯が湧いたとされる天禄三年より71年早い。つまり温泉が出る前の話だ。
大分県には道真の伝説が多い。太宰府への道筋にあたるからだ。宝泉寺の場合は、湯とは直接つながらない伝えとして残っている。
九重に十一ある温泉地のうち
九重町は町内の温泉地を「九重“夢”温泉郷」としてまとめている。十一ある。
筋湯、宝泉寺、長者原、湯坪、龍門、壁湯、筌の口、寒の地獄、九酔渓、川底、水分。
同じ町のなかで、性格はかなり違う。筋湯は「日本一のうたせ湯」で知られ、長者原はくじゅう連山の登山基地、湯坪は約20軒の民宿村、寒の地獄は冷泉に入る。
宝泉寺は、そのうち町田川沿いの低い側にある。大分道の九重ICから15分で、いちばん行きやすい位置だ。
山の上の温泉地へ行く前に一泊する、という使い方ができる。
着くまで
大分自動車道の九重ICから国道210号・387号経由で約9キロ、15分ほど。
鉄道ならJR久大本線の豊後森駅から、玖珠観光バスの小国行きで約30分。宝泉寺交通センターで降りて徒歩3分と日本温泉協会は案内している。
湯布院や別府からは車で1時間前後。熊本の黒川温泉へも車で30分ほどで、県境をまたいで組み合わせやすい位置にある。
九重夢大吊橋、くじゅう連山、やまなみハイウェイ。周りに行き先が多い温泉地なので、車があるかどうかで過ごし方がかなり変わる。
宝泉寺温泉の日帰り入浴
- 九重夢大吊橋
- くじゅう連山の登山口
- 筋湯温泉のうたせ湯
九重町は十一の温泉地を持つ。車があれば一日で複数を回れる。
受付時間・定休日・料金は施設ごとに異なり、変更されることもあります。 お出かけの前に各施設の案内をご確認ください。
温泉地カルテ
夏・秋
- 所在地Location
- 大分県
- 泉質Spring Quality
- 単純温泉
- 最寄駅Nearest Station
- JR久大本線 豊後森駅(玖珠観光バス小国行き約30分、宝泉寺交通センター下車 徒歩約3分)/大分道 九重IC(車約15分)
- 東京からFrom Tokyo
- 約4時間
- 大阪からFrom Osaka
- 約4時間30分
※ 泉質・泉温・pH は代表的な源泉の値です。施設ごとに異なる場合があります。 効能は泉質の一般的な適応症であり、効果を保証するものではありません。
宝泉寺温泉のよくある質問
Q源泉かけ流し宣言とは何ですか
宝泉寺温泉郷が温泉地ぜんたいとして行った宣言です。宿の一軒はこう説明しています。「宝泉寺温泉郷は素晴らしい名湯と、温泉地としての原風景を後世に残していくため、平成21年に『源泉かけ流し』宣言を行い、温泉文化の継承と創出に努めております」。九重町も公式サイトで同じことを書いています。個々の宿の湯の扱いは宿ごとに確かめてください。
Q宝泉寺という寺はあるのですか
今はありません。九重町観光協会はこう書いています。湯が湧いたのに驚いた村人が泉のほとりに寺を建て、上人が宝の泉を下さったことから平原山宝泉寺と名づけ、本尊に空也上人と大日如来を安置したと伝わる。「現在、寺はありませんが山間の静かな温泉場として賑わっています」。地名と温泉地の名前だけが残りました。
Q泉質と湯量を教えてください
日本温泉協会は単純温泉としています。泉質別適応症として自律神経不安定症、不眠症、うつ状態を挙げています。宿の一軒は温泉郷全体で毎分2,000リットル以上の湧出量があり、無色透明で入りやすい湯だと書いています。
Qホタルは見られますか
九重町は宝泉寺温泉について「3種類のホタルの舞うこの美しい温泉地」と書いています。宿の一軒は、町田川には5月下旬から6月初旬にかけてゲンジボタルが姿を見せ、露天風呂から見られると案内しています。年によって時期は前後します。
Q九重夢温泉郷とは何ですか
九重町がまとめている町内の温泉地の総称です。筋湯、宝泉寺、長者原、湯坪、龍門、壁湯、筌の口、寒の地獄、九酔渓、川底、水分の十一。宝泉寺はそのうち町田川沿いにあり、大分道の九重ICからいちばん近い側にあたります。
Qアクセスを教えてください
大分自動車道の九重ICから国道210号・387号経由で約9キロ、15分ほどと日本温泉協会は案内しています。鉄道ならJR久大本線の豊後森駅から玖珠観光バスの小国行きで約30分、宝泉寺交通センターで降りて徒歩3分です。
ほかの温泉地と比べる
宝泉寺温泉の宿

宝泉寺温泉 はんなりおやど 龍泉閣
宝泉寺温泉の14室の宿。宿は源泉かけ流しで、メタケイ酸が豊富な「はんなり美人の湯」だと書く。入浴は24時間(貸切と打たせ露天は22時まで)。九重ICから約10分。

宝泉寺観光ホテル 湯本屋
大分県玖珠郡九重町町田、宝泉寺温泉の30室の宿。公式サイトは風呂をすべて100パーセント源泉かけ流しとしている。作家の檀一雄の小説に出てくることから名づけた「檀の湯」は宝泉寺温泉で最大の広さと湯量だと宿は書き、その露天は「ほたるの湯」という。ほかに古代檜を敷いた「かわせみの湯」、十人入れる貸切露天の「駒吉の湯」。九重ICから車で15分。
UPDATED 2026.09.25


