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杖立温泉は熊本県の北端、大分との県境にある。
杖立川の峡谷の両岸に宿が密集し、その隙間を狭い路地が走る。温泉街の形そのものが、この土地の見どころになっている。
背戸屋
宿と宿の間を縫うように、狭い路地が走っている。背戸屋と呼ばれる。
峡谷の斜面に宿が密集して建てられた結果、建物の裏手に細い道が網の目のように残った。観光のために作られたものではなく、町の造りがそのまま残っている。この路地を歩くこと自体が、杖立に来る理由になる。
川の上の鯉のぼり
春、杖立川の上に数千匹の鯉のぼりが渡される。
例年4月上旬から5月上旬。峡谷の川の上を鯉のぼりが埋める光景は、この温泉地が最も知られている姿である。この時期は混雑し、宿の予約も取りにくい。開催期間は年によって変わるので、事前に確認したい。
蒸し湯
杖立には蒸し湯がある。
温泉の蒸気を使った蒸し風呂で、湯温が高く蒸気が豊富な土地だからこそ古くから使われてきた。湯に浸かるのとは別の入り方で、体験できる施設がある。別府の鉄輪と同じく、湯の熱を蒸気として使う温泉地である。
この温泉地の湯
湯は塩化物泉。湯温が高く、蒸気が立つ。
塩分を含むため保温性があり、湯上がりに体が冷めにくい。
杖という名前
杖立という地名には、由来が伝わっている。
杖立温泉観光協会によれば、平安時代の初めに旅で訪れた弘法大師空海が温泉の効能にいたく感銘して句を詠み、持っていた竹の杖を立ててみたところ節々から枝や葉が生えてきたことから「杖立」という地名がついたと言われている。
杖をついて来た人が杖を置いて帰る、という言い回しは各地の湯治場にある。杖立の場合は、置いていった杖が根づいたという形になっている。
千八百年前の産湯
協会はさらに古い話も伝えている。
杖立温泉の始まりは1800年以上前、仲哀天皇の時代にさかのぼる。天皇の御子を身ごもっていた神功皇后が筑前の宗像で産気づいたとき、現れた白髪の老人が「これより東南に川をさかのぼると霊泉がある。これを汲み産湯に用いれば皇子は千歳の寿を保たれるであろう」と告げた。付きの者が山を越えて一筋の湯気を見つけ、皇后のもとへ持ち帰って産湯とした。その霊泉が杖立温泉で、生まれたのが後の応神天皇だった——と。
伝説である。ただ、この土地が古くから湯の出る場所として知られていたことは、話が残っていること自体が示している。
九州の奥座敷から、いまの杖立へ
この温泉地には、にぎわいと衰えの両方の記憶がある。
協会はこう書いている。はるか昔から泉質の良さが評判となり「湯治の街」として愛され、昭和のはじめには「九州の奥座敷」として歓楽街としてのにぎわいを見せた。平成に入るとその華やかな盛り上がりは衰退していくが、いまもその名残をあちこちで感じることができる。そしていま、さまざまな歴史を受け継ぎながらも由緒正しい温泉街として静かに息づいている、と。
衰退という言葉を自分で使っている観光協会は珍しい。背戸屋の路地が残っているのは、昭和の盛りに増改築を繰り返した結果である。にぎわいの名残が、いまは歩く楽しみになっている。
協会は、限られた資源である温泉をしっかり守り、生活に根付いた適正規模のまちづくりを目指していると書いている。地元の案内人が背戸屋を歩いて回る「みちくさ案内人会」もその一環である。
黒川と組み合わせる
杖立から黒川温泉までは車で30分ほど。
黒川は整えられた景観と入湯手形で知られる温泉地、杖立は密集した宿と路地の温泉地。同じ熊本県北部の山あいにありながら、性格がまるで違う。続けて訪ねると、温泉街の作り方がいかに違うかが見える。
歩き方
JR久大本線の日田駅からバスで50分ほど。福岡からは日田経由で2時間ほどになる。東京からは飛行機で福岡か熊本へ入る。
鉄道の駅から遠く、バスの本数が限られる。車があるほうが自由になる。温泉街の中は徒歩で回るが、坂と階段が多い。
杖立温泉の日帰り入浴
- 共同浴場
- 日帰り入浴を受け入れている宿
鉄道の駅から遠く、バスの本数が限られます。
受付時間・定休日・料金は施設ごとに異なり、変更されることもあります。 お出かけの前に各施設の案内をご確認ください。
温泉地カルテ
春・秋
- 所在地Location
- 熊本県
- 泉質Spring Quality
- 塩化物泉
- 最寄駅Nearest Station
- JR久大本線 日田駅(バス約50分)
- 東京からFrom Tokyo
- 約3時間30分
- 大阪からFrom Osaka
- 約3時間
※ 泉質・泉温・pH は代表的な源泉の値です。施設ごとに異なる場合があります。 効能は泉質の一般的な適応症であり、効果を保証するものではありません。
杖立温泉のよくある質問
Q杖立という名前の由来は?
杖立温泉観光協会は、平安時代の初めに訪れた弘法大師空海が温泉の効能に感銘して句を詠み、持っていた竹の杖を立てたところ節々から枝や葉が生えてきたことから「杖立」という地名がついたと言われていると伝えています。
Q杖立温泉はどのくらい古いのですか?
観光協会は、始まりを1800年以上前の仲哀天皇の時代にさかのぼるとし、神功皇后が後の応神天皇の産湯に用いた霊泉がこの湯だったと伝えています。伝説ですが、古くから湯の出る場所として知られていたことを示しています。
Q背戸屋はなぜできたのですか?
観光協会は、狭い土地ながらも昭和の時代ににぎわいを見せた際に増改築を繰り返してきたことで描かれてきた町並みだと説明しています。観光のために作られた路地ではなく、町の造りがそのまま残ったものです。
Q杖立温泉の鯉のぼりはいつ見られますか?
例年4月上旬から5月上旬にかけて、杖立川の上に数千匹の鯉のぼりが渡されます。この時期は混雑し、宿の予約も取りにくくなります。開催期間は年によって変わるので、事前に確認してください。
Q背戸屋とは何ですか?
宿と宿の間を縫うように走る狭い路地のことです。峡谷の斜面に宿が密集して建てられた結果、建物の裏手に細い道が網の目のように残りました。温泉街を歩くこと自体が見どころになっています。
Q蒸し湯とは何ですか?
温泉の蒸気を使った蒸し風呂です。杖立は湯温が高く蒸気が豊富なため、古くから蒸し湯が使われてきました。湯に浸かるのとは別の入り方で、体験できる施設があります。
Q杖立温泉は日帰りでも入れますか?
入れます。日帰り入浴を受け入れている宿や共同浴場があります。ただし鉄道の駅から遠く、日田駅からバスで50分ほどかかるため、泊まりのほうが向いています。黒川温泉から車で30分ほどの距離です。
ほかの温泉地と比べる
杖立温泉の宿

杖立温泉 葉隠館
杖立温泉の10室の宿。宿は天然温泉かけ流しを掲げる。泉質は単純温泉、弱アルカリ単純泉、弱アルカリ性食塩泉。日田ICから国道212号を阿蘇方面へ車で30分。

杖立温泉 純和風旅館 泉屋
子ども歓迎と部屋食を掲げる杖立の宿。伝統の蒸し湯があり、杖立バス停のすぐそばにある。福岡市内から車で90分。
UPDATED 2026.10.01


